米中、「デジタル冷戦」幕開け 2018/06/09 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「米中、「デジタル冷戦」幕開け」です。





【北京=原田逸策、ワシントン=鳳山太成】米商務省による中国の国有通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁が罰金や経営陣入れ替えを条件に解除された。米国は予想以上の制裁効果に自信を深め、今後もハイテク制裁を対中カードにちらつかせる構え。中国は今回の教訓を踏まえ、基幹技術の自前開発を急ぐ。ZTE問題の決着は、将来の技術覇権を競う「米中デジタル冷戦」の幕開けにもなりそうだ。

「米国の法律を犯せば大きな傷を負う。他の企業もよくわかったはずだ」。ロス米商務長官は7日、米テレビ番組で制裁の威力を強調した。

ZTEは4月、北朝鮮やイランとの取引に関与したことで米企業との取引を7年間禁じられた。半導体など多くの部品を米企業に頼っていたためスマートフォンや通信設備を製造できず、経営破綻の瀬戸際に立った。

制裁は米国の予想を上回る効果を上げ、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席はZTE問題で何度もトランプ米大統領に電話した。ホワイトハウス関係者は「中国を動かすには共産党と関係が深い企業を狙い撃つのが手っ取り早いことが分かった」と話す。

米政権は売上高がZTEの5倍超の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)にも目を向ける。司法省はイランとの違法取引がないか同社を捜査しているもよう。今後も対中の交渉カードにハイテク制裁をちらつかせる可能性がある。

ZTE制裁は中国に深い衝撃を与えた。

習指導部は昨秋の共産党大会前から国威発揚に力を入れ「技術水準でも先進国に近づいた」と宣伝。国際特許出願で世界上位のZTEは代表選手だった。それが制裁で基幹技術を米国に頼る事実と、ずさんな法令順守体制が発覚。習氏の「強国路線」まで揺らぎかねない状況に追い込まれた。

「核心技術はもらえないし買えない。自ら握ってこそ経済や国防の安全を保てる」。5月、北京の人民大会堂に数千人の科学者を集めて習氏は力を込めた。基幹技術を国産化して初めて米国に対抗できるとの訴えだ。

習氏は制裁直後には莫大な国家予算を投じて建設した半導体工場を視察。ネット上では「どんな代償を払っても国産半導体を」との強硬論があふれる。米中貿易協議でも、世界一の技術強国をめざす産業政策「中国製造2025」の停止を米国は求めるが、中国は応じる気配がない。

ZTE制裁は核心技術を海外に頼る中国のもろさを浮き彫りにし、技術の自前開発を加速させる契機にもなった。制裁が中国に対する米国の技術優位がゆらぐ転換点になる可能性はある。

実際、すでにいくつかの分野で中国は米国との技術の差を縮める。

例えば、人工知能(AI)。中国ではAIのスタートアップ企業が急増しており、AIの論文数や引用回数はすでに世界一。5万人以上のAI人材を抱える。AI企業への投資額も17年までの累計で635億元(約1兆1千億円)と米国の6割に迫る。

画像認識は世界をリードする。17年の国際的な認定協議会では中国勢が8分野すべてで1位を独占。画像検索の速度と正確さでアリババ集団は米グーグルを上回るとされる。北京のベンチャー企業が開発した顔認識システムは防犯システムに応用される。中国は14億人から豊富で多彩なデータが集まり、AI技術の開発には有利な環境だ。

米議会の一部議員はフェイスブックやグーグルの米IT企業と、ファーウェイなど中国企業との関係を問題視し始めた。フェイスブックの場合、米政府が「スパイ」と見なす中国の携帯電話メーカーに対して同社が個人情報へのアクセスを許していたことが5日に発覚した。

国家の強い意志でデータを集め企業を育成する中国の姿勢をいぶかる声もある。中国政府がデータを悪用し、人権が侵されかねないとの懸念だ。米上院情報委員会の副委員長をつとめる民主党のマーク・ワーナー氏は「米企業は中国企業との取引には慎重であるべきだ」と警鐘を鳴らす。



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