米中衝突 摩擦の深層(2) 深まる相互依存 2018/07/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「米中衝突 摩擦の深層(2) 深まる相互依存」です。





中国から米国への年間輸出額が704億ドル(約8兆円)と全品目中トップでも、米政府の対中追加関税リストに登場していない商品がある。スマートフォン(スマホ)など携帯電話だ。

(画像:半導体国産化の大号令のもと、工場建設が急ピッチで進む(武漢市郊外))

スマホは制裁除外

米アップルのiPhoneは企画・デザインは米国、部品は日本や韓国、組み立ては中国という国際分業の象徴だ。だが付加価値の大半は商品企画や設計という「川上」と販売・アフターサービスという「川下」を押さえる米国が握る。

中国商務省の報告書によると、約650ドルのiPhone1台を売っても中国には計8.5ドルしか落ちない。貿易統計では中国の対米輸出額に計上されても、利益は米企業が手にする現実を米当局は熟知する。

だが貿易赤字を「損失」ととらえるトランプ米大統領の叫びはサプライチェーンを揺らし始めた。iPhoneを中国で受託製造する台湾の和碩聯合科技(ペガトロン)は年内にもインドに工場を新設する。童子賢董事長は「(世界貿易の)不確実性が非常に高まっている」と米中摩擦を理由の一つに挙げた。

中国有数の穀倉地帯である東北地方。吉林省の金川村を訪れると、一面にトウモロコシ畑が広がるなか、大豆の苗がぽつんと植えられていた。村の共産党委員会書記の畑だという。

中国政府は米国への報復関税リストに大豆を含め、大豆を栽培する国内農家への補助金を大幅に増やす通知を4月末に出した。だが末端の農家には通達が間に合わなかった。地元農家の任さんは「すでにトウモロコシを植え、肥料もまいていた。切り替えようがなかった」と話す。

大豆は中華料理で大量に使う油の原料や豚肉の飼料に用いられ、安価な米国産は中国の物価安定の要だった。それでも報復関税に踏み切るのは、米中間選挙を前にトランプ氏の票田である農業州を揺さぶる狙いだ。国産大豆の増産は一朝一夕には難しいが、中国は持久戦を覚悟しつつある。

自前で技術高度化

6月、湖北省武漢市で建設中のNAND型フラッシュメモリーの工場を訪れると、大型トラックが土煙を上げて出入りしていた。工場がある光谷地区には半導体産業が集積し、「中国の半導体 光谷の夢」の標語が近くに掲げられていた。

米国のハイテク制裁で自前技術を握る重要性を思い知った中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は「核心技術を手にして初めて経済や国防の安全を維持できる」と半導体国産化に大号令をかけた。米国の制裁が中国の技術高度化を加速させる皮肉な事態が進む。

「あらゆる選択肢を検討している」。3月、中国の崔天凱・駐米大使は米国債の購入減額に含みを持たせた。海外保有分の約2割を占める1兆1180億ドルの残高を抱える中国が米国債売りに回れば米長期金利は上昇し、世界的な金融市場の動揺が避けられない。中国にとってもかつては言及することすらためらわれる「禁じ手」だったが、摩擦の激化は両国当局者の理性を失わせつつある。

経済的な相互依存が深まる「不都合な真実」に目をつぶり、対決姿勢をエスカレートさせる米中。事態が合理性を超えて進むリスクを金融市場は織り込み始めている。



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