米中衝突 摩擦の深層(4)「1党」対「独善」 2018/07/05 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「米中衝突 摩擦の深層(4)「1党」対「独善」」です。





「他に選択肢はない。時間切れだ」。6月19日、2千億ドル(約22兆円)相当の中国からの輸入品に追加関税の検討を指示したトランプ米大統領は経済界の会合で毒づいた。ナバロ大統領補佐官も5月以降の米中貿易協議が「何の進展もなかった」と3回繰り返した。

焦り映した強権

大統領に就任して初の審判となる米中間選挙まで4カ月。目に見える実績を示せなければ、2020年大統領選での再選も遠のく。わずか1カ月で中国との対話を見切り実力行使をほのめかす刹那主義や、毎朝、毎晩に指先からツイートを放って自己正当化する独善的なトランプ流は、焦りの裏返しでもある。

「民主主義は最悪の政治形態だといえる。これまで試されたあらゆる他の政治制度を除けば」。英国の宰相チャーチルが残したとされる名言は、自由主義と民主主義の優位を誇っていた。だが見つからなかったはずの「選択肢」が世界を揺るがし始めている。決定に時間を要さず、選挙も関係なく大方針が決まる中国の政治システムだ。

北京の南西100キロに位置する河北省雄安新区。6月半ばに訪れると、わずか半年前に一面の畑だった場所は次世代の先端技術を使ったスマートシティーのモデル地区に変わっていた。

斬新なデザインの建物が立ち並ぶ街の一角では、レジに店員がいない「無人スーパー」が営業を始めていた。顔認証技術を使って本人確認し、スマートフォンで支払いまで完結する仕組みだ。「政府の後押しでビッグデータを収集しやすい中国で人工知能(AI)が進化するのは確実だ。世界で勝負するにはプロジェクトに加わるしかない」。参加企業の関係者は漏らす。

一声で33兆円

雄安新区は東京都に匹敵する2千平方キロメートルの面積に人口200万人の新都市を築く壮大な計画だ。習近平(シー・ジンピン)国家主席の一声で2兆元(約33兆円)の費用と20年近い歳月を投じる決定は、共産党が一党支配する中国だからできる離れ業だ。

街中に監視カメラが設置されるなど、一党支配下の安定は究極の管理社会という大きな代償を伴う。それでも異論を排し事業を進める圧倒的なスピードは、議会を通じて利害調整する民主主義国にとって脅威だ。

国家主席の任期撤廃を取り付けた習氏は、基軸通貨ドルの地位もうかがう。

「『一帯一路』の共同建設を中心に実務協力を深めなければならない」。6月10日、習氏は訪中したイランのロウハニ大統領に呼びかけた。中国は米国からのイラン産原油の禁輸要請も拒む構えを見せるなど、自らの広域経済圏構想に取り込もうと秋波を送る。

中国は3月、上海市場で原油先物の人民元建て取引を始めた。世界最大の原油輸入国として、ドル一辺倒の原油取引に風穴を開ける狙いだ。産油国イランが加わり、ドル建ての金融規制を迂回した人民元の利用が広がれば、米中摩擦でドルが使いにくくなる事態にも備えができる。

数年単位と数十年単位。時間軸の違う民主主義と一党支配のせめぎ合いが米中による主導権争いの根底にある。米中の衝突は政治・経済システムの優劣をかけた戦いの始まりでもある。

=この項おわり

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