米朝攻防 焦点を聞く(3) 藪中三十二・元外務次官 2018/05/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「米朝攻防 焦点を聞く(3) 藪中三十二・元外務次官」です。





――北朝鮮の非核化はどのような時間軸で進めていくべきでしょうか。

「重要なのは6月12日に予定されている米朝会談ではなく、その後の具体的な手続きを進める協議だ。時間をかけず、半年以内に北朝鮮の核廃棄に向けたプロセスや廃棄した際の経済協力などの大枠を策定する必要がある。それが決まるまでは北朝鮮に対する制裁は緩めるべきではない」

「しばしば非核化のモデルとしてリビアが引き合いに出されるが、ほとんど核開発が進んでいなかったリビアと、すでに核兵器を開発・保有している北朝鮮とでは非核化に向けた難しさは格段に異なる。実際の廃棄に向けた手続きには、国際原子力機関(IAEA)だけでなく、核兵器に知見を持つ核保有国の軍が任務にあたることになる。半年で大枠を定めたとしても、実際の完全廃棄までは時間が必要だ」

――北朝鮮はこれまで合意と反故(ほご)を繰り返して核兵器開発の時間を稼いできました。

「もちろん、何年もかけるわけにはいかない。どの国に北朝鮮の核兵器を搬送するかなど課題は多いが北朝鮮の非核化時期の目安をあえて挙げるとすれば、米大統領選挙が予定される20年ということになるのではないか」

――北朝鮮の金正恩委員長は本当に朝鮮半島の「完全な非核化」という意思を持っているのでしょうか。

「ここが正直、読みにくいところだ。非核化に向けた過程では、北朝鮮が保有する核物質や核兵器について正確に申告させる必要がある。前回の6カ国協議では北朝鮮の申告が限定的で、その後の検証作業で行き詰まった経緯がある。今後の交渉では、いかに申告をさせていくかがまずは課題となる」

「ただ、金委員長は行動に慎重さがみられた故金正日総書記と比べて大胆な行動を取る印象だ。金委員長としても、いたずらに協議を引き延ばすことはできないのではないか。経済制裁がかなり効果を上げており、米国と対立したままでは体制の存続が危ういということは認識している。トランプ米大統領が米朝協議の中止を宣言した際の慌てぶりをみても、早い時期に米国による体制の保証を得る必要があると考えているのが分かる」

――韓国と北朝鮮は北朝鮮の非核化に向け、米朝韓の「3者」協議を提案しています。

「日本が協議から外れることは望ましくない。後で経済的な負担だけを求められる可能性もある。日本と中国、ロシアを加えた6カ国協議の枠組みを活用するのが現実的だ」

「核問題が動かなければ日本にとって重要な課題である拉致問題も進展しない。6カ国協議を通じて段階的に核問題を扱い、同時並行で日朝協議も始めるべきだ。拉致問題が解決しない限り日本が経済協力に加わることはないとの基本方針は維持する必要がある」

(聞き手は押野真也)

 やぶなか・みとじ 1969年大阪大法中退、外務省に入省。73年米コーネル大を卒業後、韓国、アメリカなどの日本大使館で勤務。アジア大洋州局長として北朝鮮を巡る6カ国協議や日朝協議を担当。審議官、事務次官を歴任し、2010年退官。現在は立命館大学客員教授。70歳。

やぶなか・みとじ



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