米衰退で民主化逆回転 2018/06/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「米衰退で民主化逆回転」です。





世界で独裁的な強権政治の勢いが増している。自らに権力を集中させるトルコのエルドアン大統領もその典型だ。民主主義の伝道を錦の御旗に世界の秩序作りを主導した米国が衰退。共産党一党独裁の中国や、冷戦で敗北したはずのロシアが台頭する。エルドアン氏の再選は米国の求心力低下がもたらす国際情勢の混沌と無縁ではない。

エルドアン氏はロシアのプーチン大統領の統治をまねている面がある。反対勢力やメディアを弾圧、産業界の支配も進める。2000年に就任したプーチン氏はいったん首相に退いたうえで大統領に返り咲き、3月の大統領選で四半世紀にわたる支配を固めた。エルドアン氏は首相から大統領に横滑りし、憲法改正により大統領権限を強めたうえで再選した。

それぞれロシア帝国やオスマン帝国のような「大国」の再興を掲げ、ナショナリズムに訴えて支持を伸ばす。米国やクルド人勢力など「敵」の存在を強調し、不安をあおって支持を取り付けるやり方は「ポピュリズム独裁」とも呼ばれる。

東欧にも強権が広がる。4月の選挙で圧勝したハンガリーのオルバン首相は司法への介入やメディア規制などを巡って欧州連合(EU)から再三警告を受けている。反移民を押し出し、国民感情に訴えて求心力を維持する。ポーランドやルーマニアでも似たような傾向が見られる。冷戦終結後の民主化の逆回転のような状況が起きつつある。

背景には民主主義の守り神となってきた米国の力が衰え、世界の秩序が揺らいでいる事情がある。トランプ米大統領の誕生と行動はそれを如実に表す。自ら移民の排除姿勢を強め、自由貿易を阻害する行動に走り、同盟国の利害も顧みない。

「不安定な世界情勢に乗じて国を守ると主張する強権指導者が支持を集めている」。英王立国際問題研究所のロビン・ニブレット所長は指摘する。ハンガリーの社会学者バーリント・マジャル元教育相はプーチン氏らの統治をマフィアの組織と重ねる。政府、議会、司法、治安機関、メディア、経済界にもトップへの忠誠を誓わせ、「ファミリー」の支配が進む。民主的な手続きでの政権交代は難しくなっている。

トルコの選挙直前に同国の通貨が急落したように、こうした指導者のアキレスけんは経済運営にある。法の支配が機能せず、財産権も保護されぬなかで、政権に近い企業の乗っ取りや汚職が横行し、投資や競争を阻害する。ロシア経済はすでに停滞に陥っている。

国内問題から国民の目をそらすように強権指導者は対外強硬策に走る。プーチン氏はウクライナに侵攻して支持率を押し上げ、シリアへの軍事介入にも突き進んだ。エルドアン氏も脅威をあおってシリアやイラクのクルド人勢力を攻撃する。世界は一段と不安定で不確実になってきた。

(モスクワ=古川英治)



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