米 東欧に戦車配備検討 ウクライナに兵器提供も ロシアの介入けん制 2015/06/18 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「米 東欧に戦車配備検討 ウクライナに兵器提供も ロシアの介入けん制」です。

一時、バイデン副大統領がソチを電撃訪問するなど、ウクライナを巡る米ロは緊張緩和の兆しが見えていましたが、ここに来て再び緊張が高まってきているようです。





 【ワシントン=川合智之】ウクライナ東部の停戦合意後もロシアが親ロシア派武装勢力を支援しているとして、米国はロシア周辺の東欧7カ国に戦車や重火器を配備する検討を始めた。米議会もウクライナへ対戦車砲などの致死性の兵器を提供する予算を盛り込む方向で審議している。実現すれば、米国は欧州から段階的撤退を続けてきた冷戦後の軍事政策を見直すことになり、オバマ大統領は配備の是非を慎重に検討する構えだ。

停戦合意後も戦闘は収まっていない(5日、ウクライナ東部ドネツク周辺で警戒する政府軍)=ロイター

 米紙ニューヨーク・タイムズによると、米国防総省は3千~5千人規模の部隊が使用する武器・装備を配備することを検討している。リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト3国には各150人規模の中隊向け装備を配し、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリーの東欧諸国には各750人規模の大隊向け装備を置く。

 具体的にはM1A2戦車250両を含む装甲車や自走砲など1200両の配備を検討している。ポーランドのシェモニヤク国防相は14日、ツイッターに「米軍装備をポーランドに配備する計画が近く決まる」と投稿した。

 米はロシアとの軍事対立が先鋭化するのを避けるため、同地域への恒久的な軍の駐留を見送ってきた。今回の配備が実現すれば、冷戦後に同地域の北大西洋条約機構(NATO)加盟国へ米軍が重装備を置く初めての例となる。ウクライナ東部の一部を実効支配する親ロシア派武装勢力と、軍備提供などで支援するロシアをけん制する。

 アーネスト米大統領報道官は15日の記者会見で「NATO加盟国の領土保全を守るのは米国の義務だ」と述べ、装備の配備計画は「初期段階にある」と認めた。配備にはカーター米国防長官やホワイトハウスの承認が必要になる。

 ロシアは米の計画に強く反発する。ロイター通信によると、プーチン大統領は16日、核弾頭を搭載できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)40基以上を年内に追加すると表明。ロシア外務省は15日の声明で「危険な結果を招く」として、配備計画を見送るよう米に要請した。

 一方、米議会でもウクライナ軍に迫撃砲などの装備や弾薬といった致死性の武器を提供する予算を盛り込む方向で審議が進んでいる。既に下院は予算が通過しており、上院でも審議が進む。これまでは暗視ゴーグルなど非致死性の装備の提供にとどめていた。

 米政府はこれまでロシアに経済制裁や外交交渉を通じて圧力をかけてきた。ドイツ南部エルマウで開いた主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)でも、2月の停戦合意が履行されない限り、対ロ制裁を続ける方針を確認した。

 バイデン米副大統領はウクライナのヤツェニュク首相との10日の会談で、G7が協力して「ロシアに重大な追加制裁を科す用意がある」と伝えた。ロシアの金融、エネルギー、防衛など主要産業に対する経済制裁を強化することなどを検討しているとみられる。

 このままロシアが停戦合意を無視すれば、米は軍備提供などで圧力を強め翻意を迫る構えだ。ただロシアが強く反発して軍事的な緊張が高まる恐れもある。

米ロ対立 緩和策見えず

 【モスクワ=古川英治】ウクライナ危機を巡る米ロ対立は解決の糸口がつかめぬまま、エスカレートしつつある。年内に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を新たに40基配備すると表明した16日のプーチン大統領の演説は「軍拡競争」の宣言に近い。欧州が脅威にさらされれば、オバマ米政権は対抗姿勢を示さざるを得ず、それがロシアを一段と硬化させる構図だ。

 「我々は米国がプーチン政権をつぶしにかかっていると確信している」とロシア政府筋はいう。ロシアの見方によれば、親ロ派政権が市民デモに倒された2014年のウクライナの政変は「(ロシアの勢力圏を侵す)米国の陰謀」。これに対し、ロシアは武力によりウクライナ領クリミア半島を編入、同国東部への軍事介入にも踏み込み、欧米の制裁を招いた。

 プーチン大統領が核の使用をちらつかせてまで米欧を威嚇する背景には国内事情も絡む。ウクライナ危機前から停滞していたロシア経済は米欧の制裁と資源価格の下落で不況に陥った。「政権は生き残りのために“戦時体制”が必要なのだ」と米ブルッキングス研究所のリリア・シェフツォワ上席研究員は指摘する。

 オバマ政権内の空気はケリー国務長官が5月にロシア南部ソチでプーチン大統領と会談してから急速に変わった。イラン核問題などで協力を模索したが、ウクライナ介入を止めずに軍拡に走るプーチン政権に反応せざるを得なくなった。

 バルト3国など東欧諸国が危機感を強めるなかで、少なくとも北大西洋条約機構(NATO)加盟国を防衛する構えを示さなければ、米国の求心力は失墜する。対ロで弱腰と受け止められれば「南シナ海での中国の出方にも影響する」(欧州外交筋)懸念もある。

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