経営の視点 「企業内起業家」のすすめ大手の眠れる「資産」いか せ シリコンバレー支局長小川義也 2017/9/18 本日の日本経済新 聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「経営の視点 「企業内起業家」のすすめ大手の眠れる「資産」いかせ シリコンバレー支局長小川義也」です。





 就職より起業を選択する若者が日本でも増えているという。だが、ヒト、モノ、カネが大企業に集中する構造は簡単には変わらない。日本発のイノベーションを増やすカギは、大企業に眠る知的財産などを活用し、新たな価値を生み出す「イントラプレナー(企業内起業家)」にある。会社員でありながら起業家精神にあふれる人材をどう育てるか。ANAホールディングスの取り組みが興味深い。

 東京・汐留。ANAの本社内でいま、旅客や貨物の動きに関するビッグデータを活用した新たな金融ビジネスの検討が進んでいる。中心となっているのは「デジタル・デザイン・ラボ」。既存事業の枠にとらわれずに新しい技術やビジネスモデルを試す「場」として2016年4月に発足した戦略組織だ。

 メンバーは経営企画出身の津田佳明チーフ・ディレクターを筆頭に、公募などで集まった運航・整備部門のエンジニア、客室乗務員など7人。さらに、ラボで検証した新技術などを既存のサービスや業務に導入する際のパイプ役として、計20人の兼務者が各事業部にいる。

 ラボ設立のきっかけは4年前。シリコンバレーと東京に拠点を置くベンチャーキャピタル、WiL(ウィル)の1号ファンドに50億円を出資し、シリコンバレーを活用した人材育成に乗り出したことだった。

 ANAの前身は1952年設立の日本ヘリコプター輸送。268機の航空機と3万9000人の従業員を抱え、日本を代表する航空会社になった同社も、最初はヘリコプター2機と従業員16人のベンチャー企業だった。「ANAには本来、新しいものに挑戦するDNAがある。だが、会社が大きくなるにつれ、みんな目の前の仕事で忙しくなってしまった」。片野坂真哉社長は振り返る。

 「入り口で否定しない」「先入観を捨てる」「分析しすぎない」「やってから判断する」「完璧を求めない」――。ラボの行動指針には、シリコンバレーのスタートアップでよく耳にする言葉が並ぶ。「指針を逆さに読むと、いまのANAの説明になる。これを変えたい」。津田氏も自戒を込めてこう語る。

 ラボの運営でとりわけ重視しているのがスピードだ。情報収集からプロトタイプ作り、検証まで1つの案件にかける時間は最大で1年間。予算も既存事業とは別枠で確保し、どの案件に着手するかといった判断も独自に下せる権限を取り付けた。

 社員の意識改革ではWiLの協力を得て、シリコンバレーのイノベーションの手法を体系化した「デザイン思考」などを学べるワークショップを定期的に開催。起業家がゼロからイチを生み出す瞬間を経験する実践の場として、新規事業のアイデアコンテストも始めた。冒頭の金融ビジネスのアイデアも、このコンテストから生まれたものだ。

 ANAはイントラプレナーに報いるリスクと報酬のバランスなど、人事制度の見直しにまでは踏み込んでおらず、改革は「まだ3合目」(片野坂氏)。だが、トップの危機感と目指す方向性は着実に社内に浸透しつつある。



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