経営の視点 「40年来の友」に割り込む中国 エネ新 秩序で足場探れ 編集委員 松尾 博文 2018/4/1 本日 の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「経営の視点 「40年来の友」に割り込む中国 エネ新秩序で足場探れ 編集委員 松尾 博文」です。





 アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビにある高級ホテルの一角に、「緑水庵」と名付けられた茶室がある。裏千家が寄贈した茶室は、日本とアブダビの茶道を通した交流の場になっている。仲立ちしたのは国際石油開発帝石だ。

 同社は2月、アブダビ沖に持つ日本最大の自主開発油田の権益更新にこぎ着けた。「積み上げてきた協力が評価された」。藤井洋常務執行役員は語った。

 茶室はアブダビとの関係強化のシンボルだ。教育、文化、環境……。国際石油開発帝石は石油を超えた幅広い協力を通して、現地の日本大使館もかなわない人脈をアブダビ中枢との間に築いてきた。

 その3週間後、中国政府系の中国石油天然気(ペトロチャイナ)が、新たにアブダビ沖油田の権益を取得した。日本が更新した1鉱区10%に対し、中国の権益比率は2鉱区で計20%。40年にわたり関係を深めてきた日本を上回る存在感を“新顔”が握った。

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の竹原美佳上席研究員は「『一帯一路』の延長線上にある中東産油国との関係強化は重要課題」と言う。

 「一帯一路」は新興国市場を開拓する経済戦略上の目標と、沿線に中国の勢力圏を広げる安全保障上の狙いが一体化した国家戦略だ。エネルギーの安定確保はその柱であり、沿線国に影響力を広げるための武器もまた、エネルギーだ。

 パキスタンで昨年9月、チャシュマ原子力発電所4号機が稼働した。建設した中国核工業集団は着工から6年足らずで完成させ、5号機建設でも合意した。日米欧の原発メーカーがもたつく間に、中国の国策メーカーは新興国で案件を積み上げ、人材と経験を磨く。

 資源開発や原発輸出で拡大する中国の影響力。これが横軸だとすれば、縦軸は脱炭素へ速度をあげるエネルギー転換だ。次世代エネルギーの普及を政策で強力に後押しし、技術を押さえて主導権を握る。そのサプライチェーンに日本企業も組み込まれざるをえない。

 太陽光発電パネルの世界シェア上位は、今や中国企業が独占する。太陽光発電協会の平野敦彦代表理事(ソーラーフロンティア社長)は「圧倒的な資金力で製造能力を増やす中国のパネルメーカーに、日本企業はついていけない」と語る。

 中国は19年から、同国での自動車生産と輸入について一定比率を電気自動車(EV)など新エネルギー車にすることを義務付ける。車載用電池は事実上、中国政府が認めたメーカーから調達する必要があるが、候補リストに外国メーカーの名前はなく、「中国メーカーに近寄るしかない」(日系自動車メーカー幹部)。

 中国経済に詳しい津上工作室の津上俊哉代表取締役は「中国市場から締め出されるわけにいかない企業は規制に従わざるをえないが、中国が一人勝ちする状況に警告を発し続けるのは日本政府や国際社会の役目だ」と指摘する。

 中国がすべてを変える――。国際エネルギー機関(IEA)は「世界エネルギー展望」の最新版で指摘した。エネルギー大転換後の世界にどう備えるか。国と企業の大きな課題である。



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