経営の視点 人材もシェアしてみたら「知のかけ算」で革新も 編集委員 水野裕司 2017/5/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の企業面にある「経営の視点 人材もシェアしてみたら「知のかけ算」で革新も 編集委員 水野裕司」です。





 自動車用などの精密部品を製造する菊地歯車(栃木県足利市)が2015年、航空機部品事業の子会社として設立したエアロエッジ(同)。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と仏サフランの連合が開発した新型の航空機エンジン向けに、タービンの羽根を供給する企業に選ばれた。

 足利市に建設した新工場が昨夏、本格稼働を開始。事業の拡大を支えるのが、兼業という働き方だ。

 製造工程の設計や生産管理を担うものづくりのリーダーは、週1回勤務のベテランだ。キヤノンで海外の工場長や現地法人社長を務めた。退職後、今は横浜市のエレクトロニクス企業と兵庫県のかばんメーカーでも生産管理をみている。

 「フルタイムにはこだわらない。パフォーマンス(成果)を上げてくれさえすればいい」と、エアロエッジで経営企画を統括する永井希依彦執行役員は言う。

 人事評価制度づくりもコンサルティング会社出身者が週1回勤務で取り組む。製品の生産履歴を管理する情報システムの構築も、新日鉄情報通信システム(現新日鉄住金ソリューションズ)などを経た専門家が兼業で作業をけん引した。

 掛け持ちでも、高い技能があれば働いてもらった方が得だ。人材もシェアする時代に入った。兼業者の活用が広がっておかしくない理由がいくつかある。

 第1に、グローバル化やデジタル化の進展で、企業が経営のスピード向上を求められていることだ。必要な能力を持った人材が社内で見つかるとは限らない。兼業という、会社に拘束されない働き方を用意することで、ほしい人材を外部から取り込みやすくなる。

 第2に、社外の人材と組んで新しい製品やサービスを生むオープンイノベーションを進めやすくなる点がある。プロジェクトごとに適任の人材と契約すれば人件費も効率的に使える。

 第3として人口減少も挙げられる。優れた人材のパイも縮小するなら獲得競争は激化する。兼業者にも人材を求めるのは合理的だ。

 エアロエッジは役員も、ほかに仕事を持っている例がある。成長戦略の担当役員は自動車メーカーで素材や燃料電池の開発に携わり、現在、人工知能(AI)による自動運転技術の実用化をめざすベンチャー企業の技術部門をみている。

 AIとエアロエッジの技術が結びつき、「思わぬイノベーションが生まれる可能性がある」(永井氏)。シナジー(相乗効果)創出も兼業の利点だ。永井氏自身、帝京大学で講師としてファイナンスを教え、立命館大学では技術を企業の競争力強化に生かす「技術経営」の研究員でもある。

 大手企業の退職者やベンチャー経営者など1万人の登録者を擁し、エアロエッジとキヤノン出身者らの橋渡しをした人材紹介業のサーキュレーション(東京・千代田)によれば、伝統的企業も兼業を活用し始めている。老舗の和菓子メーカーは食品関連企業の役員の力を借り、インターネット販売額を4割伸ばした。

 兼業という働き方を当たり前と考えることで、企業が活用できる人材や「知」が広がる。一つの会社で働き続けるのがまだ一般的な日本社会への問題提起だ。



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