緊迫する世界 識者に聞く 対北朝鮮、中国により圧力を イ アン・ブレマー氏に聞く 2017/4/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「緊迫する世界 識者に聞く 対北朝鮮、中国により圧力を イアン・ブレマー氏に聞く」です。





 朝鮮半島やシリア情勢が緊迫の度を増している。北朝鮮は核・ミサイル開発に突き進み、シリア情勢は米国やロシアを巻き込み混迷を深める。世界で高まる地政学リスクにどう備えるべきか。識者に聞く。第1回は政治学者で米コンサルティング会社、ユーラシア・グループ社長のイアン・ブレマー氏。

画像の拡大

 ――北朝鮮は軍事的挑発行為をやめる気配がありません。米国はどう動くのでしょうか。

 「米国は空母を朝鮮半島に派遣し、北朝鮮に対して数多くの警告の声明も出した。しかし、米国自身ができることは(軍事攻撃以外は)実質的にこれ以上ない。米国は衰えたとはいえ北朝鮮に影響力のある中国により真剣に対処するよう圧力をかけ続けるしかない」

 「米国は石油の輸出停止、北朝鮮の上層部の銀行口座閉鎖など厳しい経済制裁を中国に期待している。問題は中国がどのくらい動くかだ。トランプ政権は米中の貿易問題と、北朝鮮の危機解決に向けた米国への中国の協力をはっきりリンクさせた。シリア空爆も力の行使をためらわない米国のメッセージだ。そうした状況を踏まえると、中国はおそらく北朝鮮に対してより圧力をかけることになる」

 ――米国が近々、軍事行動に出る可能性は。

 「米国の軍事介入は短期的でなく、中期的な問題と見ている。5月に韓国の大統領選挙がある。接戦の選挙前に北朝鮮が(米国の軍事行動を招きかねない)核実験実施などに踏みきれば、より北朝鮮に厳しい政策を掲げる中道系の安哲秀(アン・チョルス)候補を有利にしかねない。北朝鮮は韓国大統領選、中国・米国の(制裁などの)対応を見極めようとするのではないか」

 ――米国は北朝鮮の非核化を掲げています。

 「確かに米国は北朝鮮に対して完全非核化を志向しているが、愚かな政策だ。哲学的な抱負のようなもので北朝鮮とは交渉にならないだろう」

 「核兵器や大陸間弾道ミサイル開発をしばらく凍結し、核査察を北朝鮮に受け入れさせるには、外交で経済的なメリットを与えなければならない。軍事行動に頼らず問題を解決するには、イラン核開発を巡る経済制裁解除の協議のようなアプローチが北朝鮮にも必要になるのではないか」

 ――トランプ政権が発足して3カ月。トランプ外交をどう見ますか。

 「発足当初に比べ外交は正常化しつつあるように見える。米国家安全保障会議(NSC)の常任委員からスティーブ・バノン氏が外れ、マイケル・フリン氏に代わって実務に精通するマクマスター氏が国家安全保障担当の大統領補佐官に就任。主要国大使などの政治任用も進み、共和党外交専門家たちが『心地よい』と感じられる顔ぶれが集まり始めている」

 「しかし、トランプ氏の『米国第一主義』は、世界の警察官的役割の放棄や、自由貿易を否定するユニラテラリズム(単独行動主義)色が濃いものだ。同盟に重きを置かず相手国と一対一で交渉する」

 ――北朝鮮だけでなく中東、欧州など世界で地政学リスクが高まっています。

 「背景として世界で指導的な国が存在しない『Gゼロ』が深化した。米国の指導力が衰える一方で、中国やロシアが台頭。欧州でポピュリズム(大衆迎合主義)が広がり、英国の欧州連合(EU)離脱への道を開くなどトランプ政権の発足前から地政学リスクが高まる素地はあった。しかし『米国第一主義』のトランプ政権誕生がとどめをさす格好となり、かつてないほど地政学リスクは高まっている」

 イアン・ブレマー氏 スタンフォード大学で旧ソ連圏の国家・統治システムを研究。世界約90カ国に専門家や拠点などを置き、企業に世界情勢の分析結果を提供。各国の政策立案者とも密に意見交換する。著書に「『スーパーパワー』Gゼロ時代のアメリカの選択」。47歳。

(聞き手はニューヨーク=稲井創一)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です