緊迫する世界 識者に聞く 米のシリア攻撃「評価」カーネギー中東 センター所長マハ・ヤヒア氏 2017/4/27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「緊迫する世界 識者に聞く 米のシリア攻撃「評価」カーネギー中東センター所長マハ・ヤヒア氏」です。





 ――米軍による今月初めのシリア・アサド政権軍へのミサイル攻撃は、米国の軍事・外交政策の転機となりますか。

 「ミサイル攻撃だけで米政権の姿勢が一変したと考えるのは早計だ。中東に限っても、米国が軍事介入に加えてシリアに政治的な要求を強めるのか、ロシアがどこまで強硬に反応するのかなどを見極める必要がある」

 ――米の攻撃は地域情勢にどう影響しますか。

 「米国は必要なら軍事力行使をためらわない。トランプ大統領がミサイル攻撃で発したのはそうしたメッセージだ。長期的な効果は分からないが、少なくとも短期では抑止効果があった」

 ――自身に不利に働くのに、なぜアサド政権は化学兵器を使ったとみられるのでしょうか。

 「過去にも民衆に化学兵器を使ったアサド政権は『何をやっても罰を受けない』とたかをくくっていたフシがある。アサド大統領は今回も国際社会はたいして反応しないと読み、反体制派に『おまえたちは孤立している』とのメッセージを送ろうとしたのだろう。化学兵器を持ち出す軍事的意味はほとんどなかった」

 「米軍のミサイル攻撃は、アサド大統領が勝手に手にしていると考えていた“免責特権”を否定し、国際的な規範を強めた点で評価できる」

 ――シリアをめぐっては国連主導のジュネーブ・プロセスとロシア主導のアスタナ・プロセスの2つが併存しています。

 「アスタナの協議は停戦が目的で、ジュネーブの協議は将来の政治体制を話し合うのが目的だ。ジュネーブの和平プロセスを後押しすべきだ。攻撃に表向き強く反発しているロシアが、水面下で米国とどこまで歩み寄れるかが焦点となる」

 ――長期的な解決では何が重要になりますか。

 「内戦で家を追われた難民をめぐる問題への対応が重要になる。シリアの内戦の複雑さや、過去の紛争国の復興の経験からみて、持続可能な安定には、人々が元の地域に戻るのが不可欠だ。安全の確保だけでなく経済状況への配慮も必要だ」

 「(シリア内戦に介入している)ロシアもイランも、荒廃したシリア国土の復興への十分な資金はない。アラブ諸国も自分たちの直面する経済問題で手いっぱいだ。幅広い国際支援によってシリア難民の帰還を促すと同時に経済・政治の改革を進めなくてはならない」

 ――テロ対策を口実に一部の国は権威主義的な体制を復活させようとしているようです。

 「アラブの春を引き起こしたそもそもの原因が、人々が自由を奪われているアラブの社会構造にあったことを忘れてはならない。アラブの政治や社会の変革に取り組まないと、中東問題は根本的には解決しない」

(聞き手はドバイ=岐部秀光)

=随時掲載

マサチューセッツ工科大学と英国建築協会付属建築学校で博士号。16年から現職。アラブ世界の社会構造などに詳しい。



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