緊迫北朝鮮(下)中ロが壁、未完の包囲網 2017/9/6 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「緊迫北朝鮮(下)中ロが壁、未完の包囲網」です。





 「ひどい話だと思わないか?」「これについてはどう考える?」

日米韓は連携を深める(7月、ドイツ)=ロイター

中ロは石油禁輸に慎重(3日、中国福建省)=タス共同

 北朝鮮が核実験を強行した3日。日曜日にもかかわらず安倍晋三首相は午前9時と午後11時ころからの2回、トランプ米大統領と電話した。トランプ氏は北朝鮮を巡る分析を安倍首相に聞いてくる。

「シンゾー好き」

 外務省幹部は「シンゾーと確認し合うと安心するみたい。それほど好きなんだろう」と話す。北朝鮮対応を巡る日米の首脳間のパイプはかつてないほど太い。その日米が築こうとする北朝鮮包囲網の前には中国、ロシアの壁が立ちはだかる。

 深夜のトランプ氏との協議の20分後、安倍首相が電話したのがロシアのプーチン大統領だった。「緊密な連携をしていこうと完全に一致した」。協議後、首相は記者団に力を込めた。ロシア首脳と核実験の当日に協議したのは異例とも言える早さだ。昨年1月の核実験時は16日後、同9月の実験時は外相レベルの電話協議にとどまっていた。

 しかし関係者によると内実は「完全一致」とはほど遠かった。

 首相が国連安全保障理事会の追加制裁の話に触れようとすると、プーチン氏は「国際社会で緊密に連携していこう」「対話を追求しなければならない」とかわした。圧力が必要との言質はとれず、同床異夢の構図は変わらない。日本は中国の習近平国家主席との電話も探ってはいるが、実現していない。

 その習氏は安倍、プーチン両氏の電話の約4時間前、福建省アモイ市の迎賓施設で、訪中したプーチン氏と一緒だった。新興5カ国(BRICS)首脳会議のため訪れたプーチン氏を玄関まで出迎え、会談では北朝鮮の核問題に「緊密に協調して適切に対応する」ことで一致。軍事力行使をちらつかせる米国をけん制した。

 習指導部は混乱に陥った北朝鮮から多数の難民が中国へ押し寄せる事態を恐れる。ただ、6回目の核実験で顔に泥を塗られた。米国との応酬も激しさを増す。トランプ氏は北朝鮮と経済関係のある国との貿易停止まで踏み込んだ。日本政府関係者は「中国への強い圧力だ」とみる。

対米戦略絡む

 4日、安保理で米国のヘイリー国連大使が「最強の措置」を呼びかけ、新たな制裁決議案の協議が始まった。日米は石油禁輸を求めるが、中ロは厳しい制裁に慎重姿勢を崩さない。これまで禁輸に反対だった中国政府関係者から「検討すべきだ」との声も出始めているが、10月の共産党大会まで波風を避けたい習氏は簡単には妥協できない。

 ロシアは北朝鮮情勢を米国との外交カードともみなす。ロシアにとっての脅威は北朝鮮の核ではなく、韓国で配備が進む米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)だ。ペスコフ大統領報道官は核実験後「米国などは朝鮮半島から遠く離れたところから強硬論にふけっている」と冷ややかにコメントした。

 ロシアはかねて米国と同盟国の分断を画策してきた。アジアの同盟国を動揺させる北朝鮮の暴走は、米国の影響力が低下する好機とも映る。日本のミサイル防衛強化の動きを警戒し、日本に北方領土交渉とも絡めて「米国追随」からの脱却を働き掛ける。

 北朝鮮を巡る国際社会のパワーゲームは北朝鮮政策だけでなく、対米戦略が絡む方程式になる。そこに北朝鮮包囲網づくりの難しさがある。

(恩地洋介、モスクワ=古川英治、アモイ=永井央紀)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です