緊迫北朝鮮(上)誤算続きの米、暴走招く 2017/9/5 本日の日本経 済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「緊迫北朝鮮(上)誤算続きの米、暴走招く」です。





 北朝鮮が3日、国際社会の制止を振り切って6回目の核実験を強行した。金正恩(キム・ジョンウン)体制の維持を懸けた核ミサイルは世界を「射程」にとらえる。北朝鮮の暴走を止めるために国際社会の一段の覚悟と行動が問われる。

 「米国の完全敗北をあらためて宣告し、最強国に堂々と登り詰めた」。4日の朝鮮労働党機関紙・労働新聞(電子版)は大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載する水爆実験の成功を大々的に報じた。金正恩委員長が署名した核実験命令書の写真や、米国を当てこする金己男(キム・ギナム)副委員長の談話などが掲載された。

科学技術で民心

 北朝鮮の核・ミサイル強化は正恩氏の祖父、金日成時代にさかのぼる。先軍政治を掲げた金正日総書記を経て、正恩体制で一気に加速した。なぜか。北朝鮮の国民総所得(GNI)は韓国の45分の1にすぎず、経済力では米国に太刀打ちできない。「核を捨てれば米国にだまされてイラクやリビアのようになる」。昨年5月、首都平壌で北朝鮮当局者らはこう口をそろえた。

 「合法的な核保有国になり、朝鮮半島で米国の影響力を弱化させろ」。金正日氏はこんな遺書を残したとされる。正恩時代に入ると核・ミサイルと体制維持が一体化。平壌では託児所の園庭にまでミサイルの模型や遊具があふれる。昨年1月の「水爆実験」は「民族史に特筆すべき大きな出来事」。経済発展で満足な成果を出せない若い3代目は科学技術で民心のつなぎ留めを図る。

 北朝鮮の暴走を許した背景には、歴代米政権による誤算の連鎖がある。クリントン政権は1994年の第1次核危機で、一時は核施設への限定的空爆を検討しながら、韓国政府の反対もあって最後は対話に転換。核開発の凍結と経済支援を組み合わせた「米朝枠組み合意」をまとめた。

「忍耐」裏目に

 ただ、2003年に北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明し、米朝枠組み合意が完全に崩壊。今度は北朝鮮が核放棄を約束する代わりに米国が攻撃や侵略を意図しないと確認する6カ国協議の共同声明をまとめたが、米国による金融制裁に北朝鮮が反発し、履行は宙に浮いた。

 オバマ前大統領は「戦略的忍耐」を掲げ、核放棄に向けた北朝鮮の自主的な取り組みを待った。「核」を過小評価しすぎた結果、北朝鮮に開発の時間を稼がせてしまった。「ブッシュ、オバマ両政権は北朝鮮が崩壊するのは時間の問題と考えていた」。クリントン政権で北朝鮮と交渉したウィリアム・ペリー元国防長官は指摘する。

 トランプ大統領にも誤算がある。就任時、米本土に届く核弾頭を積んだICBMの完成には約2年かかるとみていたが危機は足元に及ぶ。北朝鮮に中国任せの対応が見透かされ、米国が軍事行動に踏みきる「レッドライン」(越えてはならない一線)の一つとみられてきた核実験を許した。

 米国が「核保有国」と認めるまで、北朝鮮が核実験やミサイル発射などの挑発をやめる気配はない。米国の主体的な関与なしに解決が難しい事態に陥った。

(ソウル=峯岸博、ワシントン=永沢毅)



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