緩和の副作用 日銀内で綱引き 2018/07/05 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「緩和の副作用 日銀内で綱引き」です。





大規模な金融緩和の副作用を巡る日銀内の綱引きが表面化している。早期の利上げについて原田泰審議委員が4日の講演で否定し、同じリフレ派として知られる若田部昌澄副総裁も慎重な姿勢をみせる。一方、黒田東彦総裁らは銀行の収益減少といった副作用を一段と気にかけ始めた。今後の物価動向によっては日銀の政策を決める委員の間で意見が割れそうだ。

原田氏は講演で「市場は金利の引き上げを求めているといわれるが、実際に上げれば金融機関は大きな打撃を受ける」との見解を示した。日銀が利上げすると「債券価格と株価の下落、円高で企業の経営が悪化し、信用コストが増大する」と指摘。物価が目標とする2%上昇を見込めないなかでは金利の引き上げはあり得ない選択肢とした。

2018年3月期決算で上場地銀80行・グループの約6割が最終減益となった。日銀は2年前、政策の誘導目標について短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に抑えることにした。超低金利が長引いて銀行の収益悪化が続くなか、市場では「日銀は早ければ来年1月に長期金利を引き上げる」(大和証券の岩下真理氏)といった声がくすぶる。

仮に利上げする場合、短期金利を上げると為替が円高になる懸念があるため、まずは長期金利から調整するとの見立てが多い。ただ原田氏はこうした見方を一蹴した。

物価が低迷し、5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は0.7%上昇にとどまり、2%の目標にはほど遠い。若田部氏も6月末の日本経済新聞のインタビューに「物価が上がらない状況で(金利引き上げに)政策を変更することはない」と明言した。

日銀の金融政策を決める9委員のうち、原田氏と若田部氏は大規模な金融緩和を主張するリフレ派として知られる。若田部氏は「デフレに戻る危機があるなら、ちゅうちょなく追加緩和すべきだ」とも語る。日銀が景気見通しを示す「展望リポート」の19年度の物価見通しは4月時点で1.8%上昇だったが、7月末の金融政策決定会合で引き下げる方向。リフレ派の2人にとってまずはデフレ脱却が最優先だ。

もっとも、超低金利の長期化に伴う「副作用への目配り論」を唱えるのは市場だけではない。物価2%がいつ実現できるか見通せないだけに、日銀内でも台頭している。

「物価が上昇しても経済の健全な発展が阻害されるようでは本末転倒だ」。5月24日に講演した桜井真審議委員はこう指摘した。桜井氏の発言には「副作用」を気遣う様子が目立った。黒田氏も6月の記者会見で「低金利環境が長期化すれば、金融システムが不安定化するリスクに注意が必要」と指摘した。

日銀幹部は「緩和が長引き、副作用をより注視する雰囲気が出てきた」という。長引く超低金利環境が銀行など金融機関に強いる負担は大きく、日銀は経済、物価に加えて、金融にも目配りせざるを得ない。日銀内では、物価が2%に届かなくても、1%ほどに上がれば、長期金利を上げて金融機関の負担を和らげたいとの思惑も広がる。

逆に拡大を続けてきた景気が息切れし、物価が下がる事態もあり得る。そうなれば追加緩和が必要となるが、日銀の手段はすでに限られる。「副作用への目配り論」には、政策調整の余地を少しでも確保して備えておきたいとの考えものぞく。

若田部氏は黒田総裁、雨宮正佳副総裁との歩調について「現時点では基本的な考え方は同じだが、今後とも適宜適切に決定会合で判断していく」という。意見が割れる局面も否定できない。



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