緩和マネー、縮小へ難路 世界で90兆ドル 景気・物 価なお不安 2017/7/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「緩和マネー、縮小へ難路 世界で90兆ドル 景気・物価なお不安」です。





 米連邦準備理事会(FRB)に続き、主要な中央銀行が2008年のリーマン危機後、ほぼ10年にわたり続けてきた金融緩和の解除に動く。カナダは12日、7年ぶりに利上げを決断。英中銀も10年ぶりの金融引き締めを視野に入れ、欧州中央銀行(ECB)やスウェーデン中銀も「緩和方向」の政策方針を中立に戻した。「超低金利時代」が続いた金融政策は大きな転換点に差し掛かり、正常化へ向けて試練の時期を迎えている。

■「各国中銀が密約」

 6月末、ポルトガル。大西洋を望む有数の保養地シントラに、ECBのドラギ総裁やイングランド銀行のカーニー総裁ら中銀首脳が続々と集った。表向きはECBの関連会合だが、市場では「各国中銀が引き締めに転じる前提で協調に向けた密約を結んだ」とささやかれる。

 その会合の直前、イエレンFRB議長は量的緩和で膨らんだ保有資産の圧縮を9月にも決めると示唆。英中銀のカーニー氏は直前まで利上げを否定していたにもかかわらず、シントラで「数カ月内の金融引き締め」と突如言及した。カナダ中銀のポロズ総裁も同地で利上げを宣言し、その通りに7月12日に6年10カ月ぶりの利上げを決断。カナダドルはその後、4%上昇し約1年ぶりの高値を付けた。

 「密約」がいるのは資産価格の過熱を止めて緩和を軟着陸させるにはある程度、各国通貨が足並みをそろえる必要があるからだ。一部の国が引き締めれば通貨高に見舞われ負のインパクトが集中する。

 日米欧に中国も加えた4中銀がリーマン危機後、市場に供給した「ベースマネー」と呼ばれる資金量は10兆ドル(1130兆円)超に上る。新興・資源国の資金需要は旺盛で、ベースマネーがさらに貸し出しなどに回って乗数的に膨らむ通貨量(マネーサプライ)は世界でじつに40兆ドルも増えた。危機前の06年に約50兆ドルだった世界のマネーサプライは14年に約1.8倍の90兆ドルに達した。

 世界の通貨量は戦後、国内総生産(GDP)と釣り合うかたちで伸びてきたが、リーマン危機後はGDPからかけ離れて通貨量が急増した。金利押し下げやデフレ回避などのため各国中銀が巨額の緩和マネーを市場に供給したためだ。仮に通貨量が世界のGDP並みに縮小すれば、経済や市場には15兆ドルに上る負の引き締めのインパクトが及ぶ。各国中銀の動きをみた外為トレーダーは「いよいよ世界同時引き締めが始まる」と身構える。

 米欧が金融政策を転換するのは、過剰なマネーの供給で不動産などの資産価格が跳ね上がるリスクが高まっているからだ。超低金利状態をつくって金融機関や企業をよりリスクの高い投融資に誘導した結果、カナダでは都市部の住宅価格が金融危機前の2倍に上昇。米国でも商業不動産価格は危機前の1.3倍に跳ね上がり、中国・上海の住宅価格は平均年収の20倍と、バブル期の東京を上回る水準だ。

 バブルの芽を退治するため性急な引き締めに動けば、各国の不動産市場や新興国にしみだした膨大なマネーが米欧などに還流し、市場が混乱する恐れがある。

 通貨当局者がとくにリスクを感じるのは中国だ。07年末に5.5兆ドルにすぎなかったマネーサプライが23兆ドルにまで膨張。民間債務はGDPのおよそ2倍と、日本のバブル末期の水準にまで高まった。国際通貨基金(IMF)は中国の過大債務を「世界の下振れリスク」と不安視する。

 未曽有のマネー供給にもかかわらず各国の消費者物価の伸びは鈍く、出口の手綱さばきを誤れば物価の腰を折る懸念がある。米国は1~6月期の新車販売は8年ぶりの前年割れに転落。利上げ後の自動車ローンの貸し渋りが追い打ちをかけた。「金融緩和の本質は結局、需要の先食いでしかない」と中銀首脳OBの一人は語る。景気をかろうじて浮揚させてきた緩和マネーの縮小は大きなリスクと裏腹だ。

■日銀の動き鈍く

 一方の日銀。バランスシートは07年末の111兆円から足元では500兆円を超すまでに拡張したが物価上昇率は0%台だ。1970年代以降、世界の利上げサイクルは米欧が先行し、最後発で日本が動くパターンが定着した。もっとも9年越しに及ぶ米景気拡大の寿命もせいぜい1~2年との見方が多く「米は早ければ来年半ば、景気後退局面入りする」(中銀関係者)。周回遅れの日銀にとって脱・金融緩和シナリオは「白紙」のままだ。

(ワシントン=河浪武史、高見浩輔)



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