習主席、自ら新たな火種 行き詰まる香港「一国二制度」 2017/7/ 1 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「習主席、自ら新たな火種 行き詰まる香港「一国二制度」」です。





 厳戒下の香港で、中国の習近平国家主席は1日の演説中に少しも笑顔をみせなかった。返還から20年たった香港は、習氏にとって台湾やチベット、ウイグルと同じように独立の動きを気にしなければならない危うい存在になりつつある。

 香港に駐留する人民解放軍の部隊を習氏が閲兵した6月30日。取材の登録を済ませ、当局から送られてきた会場への持ち込みを禁じる物品のリストをみて驚いた。ペンやタブレット端末に加え、わざわざ「雨傘」と記してあったからだ。

画像の拡大

返還20年を迎え、デモ行進する人たち(1日、香港)=小川望撮影

 香港で雨傘は特別な意味を持つ。2014年の秋、普通選挙の実現を求める市民や学生らが大規模なデモを繰り広げた。警官隊が放つ催涙弾から身を守るために使ったのが黄色の雨傘だ。それ以来、雨傘は強圧的にふるまう中国に対する抵抗のシンボルとなった。

 中国の主権を象徴する駐香港部隊の儀式で、黄色の雨傘を広げられるのを恐れたのだろうか。会場に入ると、すぐに赤みがかった日傘が配られた。習氏がみせた厳しい表情の裏には、香港人は放っておけばいつ独立を言い出すかわからないという根深い不信がある。

 中国は香港に高度の自治を認める「一国二制度」を返還から50年間は続けると約束していた。

 しかし、12年に最高指導者の地位に就いた習氏は「二制度」より「一国」を重視する姿勢を鮮明にする。香港人の中国への期待は急速にしぼみ、独立を志向する勢力まで育ててしまった。

 それなのに、習氏が香港に強硬な構えをとり続けるのはなぜか。

 「秋の共産党大会に向けて国内で政治的な締め付けを強めるなか、香港にだけ甘い態度をみせれば国内が持たなくなる」。香港の事情に詳しい亜細亜大学の遊川和郎教授はこう指摘する。

 北京や上海は域内総生産が香港を上回った。自信をつけた中国人は、香港を特別扱いする一国二制度への不満を募らせる。中国と香港を同じように扱うと言わんばかりだった習氏の演説は、国内向けの側面も大きい。

 だが、中国が高圧的になればなるほど、香港だけでなく台湾でも中国離れが加速する。それはかえって国内の安定を脅かす。習氏は新たな火種を自らつくり出してしまった。

(中国総局長 高橋哲史)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です