習近平の支配 愛国のジレンマ(2) 外交の振付師、3000 万人操り「世論」形成 2017/7/5 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「習近平の支配 愛国のジレンマ(2) 外交の振付師、3000万人操り「世論」形成」です。





 外交は内政の延長であり、その国の世論が左右する。共産党が一党支配する中国に世論はあるのか。

 「韓国に制裁を」。北京の韓国大使館が6月9日、中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」で文化事業を紹介すると、全く関係ない罵詈(ばり)雑言の書き込みが相次いだ。愛国主義的な主張をインターネット上で繰り返す若者「小粉紅」が攻撃をしかけたのだ。

大学生らが軍服姿で愛国歌を合唱する

 引き金を引いたのは中国共産党系の環球時報編集長、胡錫進(57)。パキスタンで20代の中国人男女2人がテロ組織に殺害された事件を巡り、2人が活動に参加していた「韓国のキリスト教団」に責任があるかのような論調を展開した。

 ちょうど、中国国家主席の習近平(64)が上海協力機構首脳会議に出席するため外遊を始めた直後だった。同機構への正式加盟承認を控えたパキスタンに悪感情が向くのを恐れた胡は、小粉紅を使って批判の矛先を韓国に向けた。

 小粉紅は、1994年に党が発布した「愛国主義教育実施綱要」で育った世代だ。中国当局が閲覧を制限する米グーグルなどに触れることなく、大学でも教養課程の半分は毛沢東思想、軍事訓練などが占める。

■ネット言論利用

 「中華民族の復興へ、どんな困難にも負けない」。5月4日、全国の大学生ら2千人が北京に集まった合唱大会。学生が軍服姿で歌う愛国歌に拍手が湧いた。どこの国でもネット言論は過激な民族主義に染まりやすいが、中国ではそこに党支配の論理が強く働く。

 小粉紅が名をはせたのは2016年1月。台湾の女性アイドルが韓国のテレビ番組で台湾の「国旗」とされる旗を振ると、小粉紅は「台湾独立派だ」と批判。女性本人が謝罪動画を配信するまで追い詰めた。

 その背後で動いたのは、共産党の青年組織、共産主義青年団(共青団)トップの秦宜智(51)。共青団は15年、習から「大衆から遊離している」と批判された。窮地に立った秦は共青団に属する学生を小粉紅に育成し、微博で「小粉紅は愛国者だ」と持ち上げた。

■暴走の恐れも

 3千万人の小粉紅は、習が掲げる「中華民族の偉大な復興」という大国外交を支える「世論」となる。在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)問題では韓国製品の不買運動を提唱。大手スーパー「ロッテ」の中国店舗の大半を休業に追い込んだ。

 だが、ゆがんだ「世論」は暴走気味だ。昨夏、中国競泳界のスター選手をオーストラリア選手が「薬物使用者」と批判すると、北京の豪州大使館の微博は「豪州は犯罪者が多い」などと侮辱する書き込みで埋まった。南シナ海問題で摩擦が生じていた両国間に緊張が走り、中国当局は慌てて「世論」を抑え込んだ。

 共青団は5月、上海のアイドルグループを「優秀青年」として表彰した。小粉紅世代に人気のグループの表彰には、想定を超える力を持ち始めた「世論」に、支配する側がおもねる空気さえ漂う。

(敬称略)



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