習近平の支配 独善の罠(1)太平洋に荒波「特朗普」発言迎え撃 つ空母 2017/1/9 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「習近平の支配 独善の罠(1)太平洋に荒波「特朗普」発言迎え撃つ空母」です。





 「空母『遼寧』を太平洋に進めるべきだ」。昨年12月、中国・北京で開かれた人民解放軍の幹部会議。海軍司令官の呉勝利(71)が策定したプランに、共産党総書記の習近平(63)がうなずいた。次期米大統領のドナルド・トランプ(70)が「なぜ『一つの中国』に縛られないといけないのか」と発言し、台湾を中国の一部とみなす習の神経を逆なでした直後のことだ。

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全国政治協商会議で掲げる南シナ海を「自国」とする地図(北京の人民大会堂)

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 現在は台湾を本拠とする国民党との内戦に勝って政権を樹立した中国共産党にとって、「一つの中国」は絶対に譲れぬ大原則だ。特に、2012年秋に総書記に就いた習は「中国の夢」を唱える。列強の侵略に遭う前の大国の地位を取り戻すという「夢」の実現には、台湾統一が欠かせない。

 危機は、危険と機会を内包する。「『特朗普』が中国の核心的利益に挑むなら流血も辞さぬ」。中国語で「特朗普」と記すトランプの言動は、中国軍内の強硬派にとって対米圧力強化の声を上げる好機となった。

 トランプ発言の4日後、海軍は南シナ海で米軍の無人潜水機を奪取。その後、呉は山東省威海から「遼寧」に乗り込んで中国空母として初めて西太平洋に進出、台湾の東側を回って南シナ海へ入った。年明けには艦載機の発着訓練の模様を公開する示威行為に出た。

太平洋二分論

 呉は、習と同じく共産党政権樹立に携わった革命世代の子弟「紅二代」だ。2人は福建勤務時代からの旧友でもある。呉が世界に名を知られたのは07年。米側に「太平洋二分論」を持ちかけた張本人とされた。台湾統一の夢を追い、今回、異例の陣頭指揮を執った。

 「補給船の運航回数は1年前に比べ3倍以上だ」。「遼寧」が戻った海南島にある清瀾港で働く女性(43)は明かす。南シナ海の中国の軍事拠点向けに物資を送り出しているのだ。

 トランプは「我々の承認を得たのか」と中国による軍事拠点化を批判したが、南シナ海を自国の「内海」とみなす習は、米国の許しを請うつもりはない。西沙(パラセル)諸島の永興(ウッディ)島に地対空ミサイル装備を配備するなど、拡大を続けている。

示威行為で探り

 民間も軍と並走する。週1回、海南島から西沙諸島を巡るクルーズ船が出発し、観光客らが浅瀬で国旗を掲揚し国歌を合唱する。「心が熱くなった」。参加した北京市の張羅軍(58)は涙を浮かべる。最近、定員が従来の3倍、900人の大型船に替わった。

 習も米国との正面衝突は望まず、示威行為を重ねてトランプの出方を探る。だが中国では一党支配を支える軍が強く、外交ではなく、力を誇示して相手を屈服させようという空気に指導部が傾きがちだ。米中関係は世界の外交、安全保障に影響をおよぼす。太平洋は波が荒立つ新年を迎えた。

 米新政権の誕生など世界が激動するなか、中国共産党の「核心」として権力を集中する習近平。一党支配の維持を最優先する「中国式統治」に潜む独善のリスクを追った。

(敬称略)

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