習近平の支配 独善の罠(4) 札束が生む人民の格差 「6%」成功への道 2017/1/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「習近平の支配 独善の罠(4) 札束が生む人民の格差 「6%」成功への道」です。





 娘の小学校入学を控えた昨秋。上海の会社員、李慶偉(仮名、35)は100元札20枚、2千元(約3万4千円)をノートに挟み、そっと副校長に渡した。生活苦のなか、月給の3分の1をなんとかひねり出した。

■支配層への切符

 学校では100人に1人ほどの優秀な児童が「大隊長」に選ばれ、左肩に赤の3本線のバッジを付ける。「『大隊長』はカネで買えないといわれるが、先生たちの心証をできるだけよくしたい」。妻から「お隣は2万元を包んだらしい」と聞き、李は焦った。

「大隊長」の3本線は憧れの的。2本線は中隊長、1本線は小隊長(上海市内の小学校)

 意識したのは、中国人の一生を左右する通信簿、「人事档案(ダンアン)」だ。学歴や職歴、懲罰まで記録され、大隊長の名誉もそこに記される。地元当局や職場が管理し、人々に「档案が傷つけば安泰な人生は遠のく」と服従を強いる。結局、李の娘は大隊長にはなれなかったが、「優秀なクラス」に入れたことで李は自分を納得させた。

 共産党が一党支配する中国。ピラミッド型の支配体制で、若いうちに「通信簿」を磨く早道は何か。その答えの一つが「入党」だ。

 浙江省杭州の女子大生、呉欽(同、21)は16年春、3年に及ぶ審査や試験を経て共産党員になった。「父や祖父もなれなかった。誇りに思う」。共産党員は8800万人に上るが、中国の人口全体の6%にすぎない。呉は「選ばれし支配層」への切符を手にした。

 だが、その頂点に立つ国家主席、習近平(63)は「党員が堕落し求心力を弱めている」と繰り返し訴える。広大な国土や様々な民族を束ねる要である支配層の劣化への危機感が強い。

■「不満抑制」は限界

 「上位1%が富の3分の1を所有している」。北京大学が最近まとめた報告書だ。「人民の国」で広がる格差。公平な競争の結果ならまだ我慢できるが、中国の庶民が思い浮かべるのは、自身の才覚で財をなした成功者の姿ではない。「ベッドの下に1億元の札束を隠していた」。そんな腐敗官僚の醜聞が絶えない。

 英国の欧州連合(EU)離脱、米大統領選でのトランプ旋風。世界では「見過ごされてきた人々」の不満が政治を動かしたが、中国の庶民は体制を選べない。党支配の維持をめざす習が選ぶのも、民の自由の拡大ではなく、不満分子を締め付け、腐敗官僚や政敵を追い落とす強権の道だ。

 「数を減らし質を高めよ」。習は党員の厳選へ大号令をかける。湖北省武漢の女子大生(21)は昨年、有名ブランドのバッグを手に街を歩いていたことを見とがめられ、党員資格試験に落ちた。ところが、10年前に党員となった上海市の女性銀行員(28)は「就職に有利だから」と、入党した理由をあけすけに語る。

 支配する側とされる側の割合は「6対94」。経済の高速成長の果実をばらまき、不満を抑える手法は限界だ。党支配の強化へ若者の入党を絞れば、「94」の不満は「95」に増える。習の支配は大きな矛盾を抱え、社会にたまる不満を解きほぐせずにいる。(敬称略)



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