習近平の支配 独善の罠(5) 「選良」たたき 党改 革、敵対勢力そぐ手段 2017/1/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「習近平の支配 独善の罠(5) 「選良」たたき 党改革、敵対勢力そぐ手段」です。





 かつての「選良」がすっかり輝きを失っている。

 中国共産主義青年団。「共青団」と呼ばれ、14~28歳の9千万人が加入する中国共産党の青年組織だ。元総書記の故・胡耀邦、前国家主席の胡錦濤(74)、現首相の李克強(61)。多くの指導者を輩出してきた。

共青団系の大学は新規募集停止に追い込まれた(上海師範大学青年学院)

 ところが実情を聞くと、「選良」のイメージとはほど遠い姿が浮かぶ。

 北京市の会社員、劉建偉(仮名、26)が共青団に入ったのは中学2年のとき。厳しい選考どころか、インターネットで出回る宣誓書を印刷し、学校で読み上げただけ。活動に参加した記憶も薄い。組織内から「団員の誇りも団結力も足りない」と批判の声が上がる。

 共青団はもともと若者を選抜し、優秀な党員に教育するための組織だ。1960年代から10年にわたる文化大革命をきっかけに、大量に失脚した党幹部を穴埋めする「人材急造機関」へと変貌した。だが北京市郊外の共青団幹部は「中学卒業までにほぼ全員が共青団に入るが、活動には3分の1も参加しない」という。

■共青団は全入に

 80年、14万人だった中国の大学など高等教育機関の卒業者は、2016年に765万人まで膨らんだ。時代は変わったのに、共青団は学生の「全入」を続けた。ある幹部は12年秋まで10年間の胡錦濤時代を「バブル」と言い切る。「ポストを得ることが目的化し、派閥化した。若者の教育という本来の役割が薄れた」

 共青団出身者を「選良」たらしめたのは、その高速出世にある。例えば、共青団トップから13年に黒竜江省長に就いた陸昊(49)。当時の省長の平均年齢は56歳。45歳だった陸の若さが目立つ。出世の「追い越し車線」を走ろうと、共青団には人材が集まった。

 そのバブルがはじけた。

 「大衆から遊離している」。15年7月、党総書記の習近平(63)は共青団批判を展開した。見据えるのは今秋に開く5年に1度の党大会。政権2期目に入るのを控え、「党内党」となった勢力をたたきに出た。

 北京市にある共青団中央のビルはがらんとしている。習の求めた改革で、4人に1人が地方の現場に派遣されているためだ。期間は半年。東北地方のある市が受け入れた共青団職員の党内序列は、市長より上。関係者は「みな怖がって仕事をさせなかった」という。

■コップの中の争い

 ゴミ捨てなど住民が地域のもめ事を話し合う「居民委員会」でも、共青団中央の職員が週1回は働くことが義務付けられた。予算も16年は前年の半分以下に削減。上海師範大学は共青団職員らを教育し、1千人程度が在学する「青年学院」の新入生の募集をやめた。

 習は「選良」に対する党内の不満を巧みにくみ取り、自らの権威を「核心」にまで高めるとともに、かつての部下らの登用を急ぐ。結局は党大会での最高指導部人事をにらみ、敵対勢力の力をそぐ権力闘争――。習が熱を込める党改革も、14億人近い庶民の目には「コップの中の争い」としか映らない。

(敬称略)



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