若田部氏 具体論は封印 日銀副総裁候補の所信表明が終了金融緩 和出口、距離も鮮明に 2018/3/8 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「若田部氏 具体論は封印 日銀副総裁候補の所信表明が終了金融緩和出口、距離も鮮明に」です。





 日銀の次の正副総裁候補による所信表明が7日までに終わった。副総裁候補で金融緩和に前向きな主張をしてきたリフレ派の若田部昌澄早大教授は持論を抑えつつ、追加緩和の条件や共同声明の見直し論に言及した。世界の中央銀行が進める金融緩和の縮小には、日銀はまだ遠いという現実がにじみ出た。

安全運転に終始した早大の若田部教授(7日、参院議運委)

安全運転に終始した日銀の雨宮理事(7日、参院議運委)

 「(緩和手法の)具体的なことは差し控える」。衆院で5日に開かれた所信質疑。若田部氏のこの発言を、希望の党の津村啓介衆院議員がとがめた。「金融政策決定会合のメンバーとしてふさわしいかを議論しているのに、話せないのはおかしい」

 今は衆参両院で与党が過半数の議席をおさえ、若田部氏の副総裁就任はほぼ確実だ。それでも所信が注目されたのは、若田部氏の考えがこれからの金融政策に大きな影響を与えるからだ。

 若田部氏は最近まで、リフレ派として具体論を発信していた。現在、日銀が年80兆円をめどとする保有長期国債の増加量を年90兆円に増やすべきだと主張。副総裁になってもこう主張するなら、金融緩和を手じまいする「出口」の議論は遠い。

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 市場関係者の間では「若田部氏は岩田規久男副総裁の教訓を意識した」(みずほ証券の上野泰也氏)との見方がもっぱらだ。2年で目標を達成できなければ辞任するとまでした岩田氏は、後に弁明に追われた。

 若田部氏は「経済学者として主張してきた」や「日銀の持っているデータを精査したい」などと語り、言質をとられることを避けた。現行の政策に賛成しても批判されないように保険をかけたようにも見える。だが、これでは金融政策の方向性は見えにくい。

 7日の参院議院運営委員会で若田部氏は、2%の物価安定目標を明記した政府と日銀による共同声明の見直しを「改善するなら日銀内でも議論すべきだ」と主張した。具体的には「名目国内総生産(GDP)を600兆円」とする政府目標を共同声明に明記することなどが「日銀でも研究できる」とした。

 仮に名目GDPを目標に掲げれば、日銀は成長に向けても責任を負う形になる。2%の物価安定目標を達成しても、GDP目標も達成するまでは緩和を続けるという論拠になりえる。

 衆参両院で1日ずつあった所信表明の機会。発言を注意深く見た市場関係者が反応したのは緩和の強化ではなく、縮小を巡る発言だ。2日に黒田東彦総裁が金融緩和の出口戦略を2019年度には議論すると発言したと伝わると、市場は踏み込んだ発言と誤解して円高と金利上昇で反応した。

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 これに対し若田部氏は追加緩和の条件について「(19年度までに2%の物価上昇という)メインシナリオがどれくらい遅れるかがポイント」と語り、出口の議論とは距離を置いた。だが若田部氏の発言には市場はほとんど反応していない。緩和縮小の時期を探る市場関係者にとっては、具体論を避けた若田部氏の発言は材料視するほどには至らなかった。

 もう一人の副総裁候補である雨宮正佳日銀理事は「出口で本当に重要なのは手段ではなく、市場とのコミュニケーションだ」と語った。過去の5年は市場への「サプライズ」が注目されたが、政策立案をしてきた雨宮氏は「サプライズ狙いで政策を作ったことはなく、サプライズの政策効果はおそらく長続きしない」と発言。市場との対話が課題との認識は日銀内に定着している。

 今回の所信表明では金融緩和を継続する点では各候補の発言は一致した。だが、その先の具体論はあまり語られず、不透明感は残る。

 日銀は8~9日に現体制で最後となる定例の金融政策決定会合を開く。会合では現在の金融政策の維持が決まる見通しだ。現体制の大きな課題となった市場との対話は、新体制に引き継がれる。

(前田尚歩)



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