英金融、欧州へ移転加速も 域内「単一パスポート」要望断念 2017/ 1/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「英金融、欧州へ移転加速も 域内「単一パスポート」要望断念」です。





 【ロンドン=小滝麻理子】英国の金融団体が欧州連合(EU)からの離脱交渉で、同じ免許でEU域内で自由に業務ができる「単一パスポート制度」の維持の要望を断念した。英金融界はEUとの新たな取り決めを探る方針だが、金融機関の間で英国外への業務移転を模索する動きが加速する可能性もある。世界有数の金融街シティーの地盤沈下が進むとの懸念がでている。

 英金融団体の「ザ・シティUK」は12日、離脱交渉に向け、政府に優先的に取り組んでほしい重要項目を発表した。そのなかで、これまで求めていた単一パスポート制度の維持を取り下げた。移民制限を重視するメイ政権の姿勢から同制度の維持は難しいと判断した。

 代わりに、英国とEUが互いに市場を利用できる独自の仕組みを作り上げるべきだと主張した。離脱後の混乱を防ぐために十分な「移行期間」を設けることや、EUから高度な金融人材を引き続き受け入れる環境づくりを要求。現在ロンドンが中心地となっている単一通貨ユーロ建て金融取引の清算業務を、引き続き確保することも強く求めた。

 同団体のマイルズ・セリック最高経営責任者(CEO)は発表文の中で「英政府と緊密に話を進め、このような優先事項をまとめるに至った」と説明。その上で「EU離脱が最大の試練であることは明白だ。不確実性を減らし、金融機関が引き続き円滑に業務を行う環境を整える」とした。

 現在、日系金融機関を含む約5400の金融業者が単一パスポート制度を利用し、英国の免許を使ってEU全域で業務を行っている。同制度を維持できるかは、金融街シティーの競争力にも直結するだけに焦点だった。

 今回、金融団体が自ら要望を取り下げた背景には今後本格化する離脱交渉が難航するとの見立てがある。メイ首相は移民制限の実現を強く主張するが、EU側は「移動の自由」を受け入れない限り、単一パスポート制度の前提となるEU単一市場への参加は認めない方針で、隔たりは大きい。

 今後の焦点は単一パスポート制度に代わる代替案の議論に移る。最有力視されているのが、欧州委員会に英国の規制や監督が同等と認めてもらう制度を活用することで、現状に近い制度を模索する案だ。だが、その場合でもEU内で新たに支店の開設が必要になる可能性があるほか、EU当局の行政判断によって安定的な営業が難しくなるというリスクがある。

 EUとの新たな関係に不透明感が漂うなか、今後金融機関の間でロンドンから一部の機能移転を探る動きが加速するのは必至。現状で移転を正式に決めた大手金融機関はないが、世界最大級の保険市場を運営する英ロイズ保険組合や米保険大手AIGなどが大陸欧州に事業の一部を移転することを検討している。仮にEU加盟国で新たに免許を申請する場合、取得には2年はかかるとされる。

 フランスのパリやドイツのフランクフルトなど欧州の各都市はロンドンからの業務移管を狙って誘致合戦を繰り広げている。いずれも総合的な金融センターの機能を備えたロンドンの代替となるのは難しいとの見方が多いが、今後本格化する離脱交渉はシティーの地位に暗い影を落としそうだ。



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