英EU離脱 揺れる世界(2)EU、硬軟両にらみ 交渉開始へ圧力、決裂は望まず 2016/07/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「英EU離脱 揺れる世界(2)EU、硬軟両にらみ 交渉開始へ圧力、決裂は望まず」です。





 「いつ交渉が始まるかは英国次第だ」。20日夕、ドイツのベルリン。メイ英首相と初会談したメルケル独首相は、離脱交渉に入るまで一定の準備期間が必要という英国の主張に理解をみせた。

メルケル独首相(右)は交渉に準備期間を求めたメイ英首相に一定の理解をみせた(20日、ベルリン)=ロイター

 欧州連合(EU)基本条約では、英国が離脱を正式通告しなければ交渉は始まらない。英国は事前の下交渉で条件闘争に持ち込みたい意向だ。EU側は「通告があるまで交渉に応じない」との原則論から「できるだけ早期に通告を」と英国に圧力をかけるが、ボールが英国側にある以上、交渉の開始時期は読めない。

 いらだつブリュッセルのEU本部では、内部で「核兵器オプション」と呼ぶ強硬手段もささやかれる。加盟国に対する最も厳しい制裁手段として、EUの政策決定に関与させない「議決権停止」を発動し、英国を交渉に引きずり出す荒技だ。一度も発動したことがない「伝家の宝刀」が取り沙汰されるほど英国の時間稼ぎへの不満は強い。

 もっとも、経済や安全保障の重要なパートナーである英国との決定的な決裂は得策ではない。EU側も硬軟両様で臨まざるを得ないのが実情だが、不透明な状況が長引くほど「反EU」の機運が高まる恐れは強まる。

 極右候補が僅差で敗れたオーストリアの大統領選がやり直しとなり、2017年のオランダの総選挙とフランスの大統領選挙でも極右勢力の台頭が予想される。メルケル首相の続投がかかる独総選挙も17年だ。EUの今後を左右する重要な政治日程と同時並行で、英国との離脱交渉は進む。

 残る27カ国の結束に腐心するEU内では今、将来像を巡り、大きく2つの潮流がせめぎ合う。

 1つが「モア・ヨーロッパ」を唱えて統合深化をめざす連邦主義だ。代表格は欧州議会のシュルツ議長と独社会民主党のガブリエル党首。英EU離脱が決定した6月24日朝、両氏は即座に「欧州の再発見」と題した政策提言を連名で発表した。欧州委員会を「真の欧州政府」とするよう訴える。ユンケル欧州委員長も提案に理解をみせる。

 だが反EU機運が強い中東欧諸国などを中心に、ブリュッセルの官僚組織への権限集中こそが英離脱の主因だとの見方は強い。足元では、EU本部から加盟国に権限を戻し政府間の連携を軸にEUを運営する「政府間主義」という名のもう一方の流れが勢いを増す。

 「EUはブリュッセルではなく、加盟27カ国の集合体に立ち返るべきだ」と訴えるハンガリーのオルバン首相に同調する首脳は少なくない。

 「モア・ヨーロッパかどうかが問題ではない」。英離脱でEU盟主の様相が一段と強まったメルケル独首相も、今は欧州統合を深化させる時機ではないと風向きを読む。雇用やテロ対策などの重要政策で「目に見える成果」をあげ、EU不信を拭うことを優先すべきだという「現実路線」は、オランド仏大統領ら主要国首脳らも共有する。

 対英交渉という爆弾を抱えながら、自ら進むべき道の再定義を迫られる。EUの苦悩は続く。



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