英EU離脱 揺れる世界(4) 市場重視、軌道修正か メイ政権、企業規制強化の色彩 2016/07/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「英EU離脱 揺れる世界(4) 市場重視、軌道修正か メイ政権、企業規制強化の色彩」です。





 「大企業に変革を提案するのはアンチ・ビジネスではない」

 首相就任の2日前、メイ氏は保守党党首選の遊説で訪れた英中部バーミンガムで経済政策の構想を披露した。買収規制の強化や企業統治の見直しなど、自由な市場経済を看板に掲げてきた保守党の政策とは一線を画す内容。ただでさえ英国の欧州連合(EU)離脱決定で不透明感が増すなか、政策の行方まで読みづらくなり、ビジネス界には戸惑いが広がっている。

 政策転換を目指すメイ氏の念頭にあるのが、英製薬大手アストラゼネカに対して米ファイザーが買収を企てた2014年の記憶だ。「資産を切り売りする実績があり、税逃れを買収の動機と自認する会社」とファイザーを名指しで批判。海外企業から英国の重要な産業を守るため、規制強化の必要性を訴える。

 ファイザー問題は当時の英議会で、買収後のリストラで英国の研究開発に悪影響が及ぶとの懸念から脚光を浴びた経緯がある。議会はイアン・リード最高経営責任者(CEO)を召喚し、雇用維持などを約束させた。アストラゼネカの経営陣の反対で買収は破談に終わったが、英国はその後、買収交渉時の約束に拘束力を持たせるようルールを改正した。メイ氏の方針はこの路線の延長線上にあるとみられる。

 今月中旬、英半導体設計のアーム・ホールディングス(ARM)の買収を発表したソフトバンクグループの孫正義社長は、英国内の雇用を倍増する計画について「法的拘束力を持たせる」と述べた。新政権の目指す方向性に沿った「空気を読んだ」動き方とも言えるが、今後の大型案件でも同じような配慮が求められるとしたら、門戸が狭まり、投資先としての英国の魅力が損なわれるリスクがある。

 格差是正を優先した左派寄りの企業改革を目指しているのもメイ政権の特徴だ。

 例えば大企業経営者の高額報酬問題では、株主総会での報酬議案に拘束力を持たせる考えを示す。大手会計事務所プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のパートナー、トム・ゴスリング氏は規制強化を避けるため、「役員報酬に対する一般の懸念に対応する手法を見つける必要がある」と企業に先手を打った変革を求めている。その他にも「消費者や従業員の代表が企業の取締役会に参加できるようにする」といった内容が改革案に含まれている。

 歴代2人目の女性宰相として、故サッチャー元首相と比較されることの多いメイ氏。だが、今のところ見えている改革案は規制強化の色彩が濃く、サッチャー氏がもたらした保守党の市場重視の伝統に大転換をもたらす可能性を感じさせる。

 一方で、EU離脱後の英経済をどう成長に導くのか、新政権は経済政策の全体像をなお明らかにしていない。産業競争力の向上や雇用拡大につなげる具体策も示せておらず、企業や投資家の不安はくすぶったままだ。

 マーケットは今のところ冷静だ。主要企業で構成するFTSE100種株価指数は約1年ぶりの高値圏に上昇し、通貨ポンドの下落にも歯止めがかかっている。通貨安で割安感の出た英国の企業や不動産などを取得する動きも出始めた。

 EU離脱後に内向きの規制強化が進めば、開かれた市場を成長の柱としてきた英国が、孤立の道をたどりかねない。神経質な海外マネーが新政権の政策からそんな匂いをかぎ取れば、金融市場は再び波乱に見舞われかねない。



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