観光立国と地域の活性化(8)顧客と継続的な関係を構築北海道大学観 光学高等研究センター客員教授 山田桂一郎 2017/10/2 本日の日 本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済教室面にある「観光立国と地域の活性化(8)顧客と継続的な関係を構築北海道大学観光学高等研究センター客員教授 山田桂一郎」です。





 企業が収益を安定させ、持続可能な経営を実現するには、各顧客との継続的な取引による収益(顧客生涯価値=CLTV)の向上を目指す必要があります。そのためには、単に良い商品を作れば売れるというプロダクトアウトの考え方ではなく、顧客が求めるものを提供するマーケットインの発想がより重要です。

 観光でも旅行者が求めるものを絶えず提供できれば地域への満足度が向上し、リピーターとして何度も訪れる可能性が高まります。CLTVを高めるためには前回までに説明した顧客情報管理(CRM)が必要になります。しかし、日本の観光地では地域単位のCRMという概念はほとんど理解されていません。個別のホテルチェーンや老舗旅館では実践されていますが、地域単位で旅行者の行動履歴や消費履歴のデータベースを基にマーケティングを行う例は限られています。

 これに対し、欧州の多くの観光地では各観光局が域内ホテルの宿泊データを一括管理する形で顧客データベースを持っているため、地域として旅行者一人ひとりのニーズに合わせた「One to Oneのマーケティング」が可能なのです。

 日本でも地域通貨のようなポイントカードの導入や地域のファンクラブ設立などで、顧客データベースの構築に取り組む地域は出ています。例えば宮城県気仙沼市の「気仙沼クルーカード」の会員制度は、地域単位でOne to Oneマーケティングを実践するCRMの仕組みになっています。

 顧客データベースがあれば、地域で個々の顧客の嗜好を把握するだけでなく、新商品を開発する際に会員への限定販売を通じてフィードバックを得ることも可能です。地域内で連携してマーケティングを行い、旅行者がより満足できる商品・サービスを継続して提供できるようになるのです。

 今後、観光地がマーケティングとブランディングを実践するためには、地域単位でCRMを構築し、CLTV向上が必須になるでしょう。地域内の経済循環を高めていくには、これこそが基本中の基本の方法ではないでしょうか。

(次回から「ソフトウエアの価値創造と日本」を連載します)



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