試練の中央銀行(上) 米量的緩和「出口」の先に FRB、資産持て余す 2014/09/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際2面にある「試練の中央銀行(上) 米量的緩和「出口」の先に FRB、資産持て余す」です。





 世界の中央銀行が針路を探っている。異例の金融政策からの「出口」へと踏み出す米国に対し、欧州は量的緩和が視野に入る。そのはざまで新興国は惑う。各中銀は時に劇薬にもなる金融政策のさじ加減に悩む。

 「2020年ごろまではかかるかしら」。米連邦準備理事会(FRB)の資産規模が「正常」な水準に戻るのに必要な時間を問われたイエレン議長は、17日の記者会見でさらりと答えた。

 FRBは市場から大量の証券を買い取り、ふんだんにマネーを流す量的緩和を続けてきた。08年の金融危機後3度にわたって拡充した異例の政策は10月で終わる。来年半ばごろから事実上ゼロの政策金利を徐々に引き上げる見通しだ。

 危機前に比べるとFRBの資産は約5倍に膨らみ、資産の国内総生産(GDP)比は6%から27%へと大幅に高まった。資産を圧縮するには手持ちの証券を減らさないといけない。

 FRB発でマネーの大きな波をつくる政策の行く末には何が待ち受けるのか。不安は2方向にある。一方は「インフレを招く」と恐れ、他方は「一気に資産を縮小すれば、緩和マネーに頼る米国や世界の経済が傷つく」と警戒する。

 今のところイエレン氏は後者をより危ぶむ。FRBが17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でまとめた「出口戦略」の大枠にも、その意向がにじんだ。

 ▼FRBの資産縮小が始まるのは利上げ後 ▼資産の縮小はゆっくり進める ▼住宅ローン担保証券(MBS)の売却は想定していない

 量的緩和はバーナンキ前議長と、副議長として支えたイエレン氏の2人が主導してきた。その効果は家計の純資産額に如実に表れる。株や住宅の値上がりを受け、09年初めの55兆ドルから足元は80兆ドル超と1.5倍に増え、過去最高を更新中だ。こうした「資産効果」は米経済の7割を占める個人消費を温めてきた。

 政策の支えを急に外せばマネーの逆流が起きかねない。需要不足による米経済の「長期停滞説」を唱えるサマーズ元米財務長官は多少のバブルを許しても緩めの政策を続けよと訴える。

 足元でインフレの不安は目立たない。消費者物価指数はFRBがめざす前年比2%の上昇率を下回る。銀行融資の急増などでマネーが市中にあふれ、物価全般に火をつける兆しはまだない。

 一方で高リスクの社債やローン債権、一部のバイオ、ハイテク株などには説明しにくい価格の急騰がみられる。17日のFOMCでも、フィッシャー・ダラス連銀総裁やプロッサー・フィラデルフィア連銀総裁が、過度に緩和的な政策を懸念して反対票を投じた。

 投票権のないラッカー・リッチモンド連銀総裁は出口戦略をめぐり「特にMBSを売却しない方針は支持できない」と批判する声明を出した。FRBがMBSを抱えたままだと、住宅資金の流れを不要にゆがめ続けるとの判断からだ。

 FRB内の不協和音は、景気を気遣いつつ、政策の方向を決めつけたくないイエレン流のかじ取りが招いた帰結でもある。市場の目先の関心は利上げに向きがちだが、空前の資産を持て余すFRBの難題は向こう何年も解けそうにない。

(米州総局編集委員 西村博之)

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