謎×経済ナゾノミクス(1)デフレ、安く買ってはいけないの?節約だけ では縮む未来 2017/5/2 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「謎×経済ナゾノミクス(1)デフレ、安く買ってはいけないの?節約だけでは縮む未来」です。





 良いモノを安く買い、低い金利でローンを組む。病気になったら病院に行く。当たり前の日常生活が、日本経済の足かせになっている。「普通のことがおかしなこと」。こんな日本経済の謎、「ナゾノミクス」をのぞいてみる。1回目はモノが安く買える「デフレ」。

タイムセールが安値買いの心に火をつける

 予定時刻は午後7時。福岡県に住む木戸祐太さん(仮名、30)は、ネットショッピングのタイムセールに目当ての商品が出てこないかチェックを始めた。「これから安くなるのに、その前に定価で買いませんよね?」

 この「いずれ安くなる」が長く続くのが日本経済を苦しめてきたデフレだ。モノやサービスの値段が下がり続けるこの現象から抜け出そうと、政府と日銀が知恵を絞る。しかし「安く買える」ことの何が悪いのか。

需給のずれ拡大

 デフレの裏側には買う側と売る側の「需給のずれ」がある。ある企業が自動車を100台つくって90台しか売れなければ、残り10台は値下げしてでも売ろうとする。そもそも値下がりを待つ人が増えれば、企業は常に値下げを迫られる。

 「売り上げが増えない企業で働く人は給料が増えず、安いモノしか買えない。これで全体の消費市場が小さくなってしまう」(ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏)。景気の悪い動きに歯止めがかからないのが、「デフレ」が悪とされる理由だ。

働き手増えず

 日本はなぜデフレになったのか。大和総研の小林俊介氏は「少子高齢化が進んだ結果、1990年代から働き手が増えにくくなったこと」が原因の一つだという。働き手が増えないと消費は伸びないが、工場(供給)は急には減らず、「需給のずれ」が大きくなったという見方だ。

 「バブル経済」の崩壊もあった。90年ごろ、経済の実力以上に値上がりしていた株式や土地が急落。損をした企業や財産を失った個人が守りに入ったことも停滞の一因とされている。

 「失われた25年」となったこの間、企業で働く人の給料(所定内給与)の伸びは年平均0.5%にとどまる。2016年度の世論調査では、20~30代は「貯蓄や投資で将来に備える」との答えが「生活を楽しむ」を上回った。ホットペッパービューティーアカデミー主席研究員の猪狩裕喜子氏は最近の若い世代について「美容室に通っていた男子が、安くてサービスが良い理髪店に回帰している」ことに注目する。

 デフレから逃れるには、商品はこの先値上がりするから「いま買ったほうがお得」というタイムセールの渦中に人々を引き込むことが必要だ。

 物価を安定させるのが仕事の日銀は今、毎年2%の物価上昇を目指している。大前提は経済が活気を取り戻すこと。日銀は企業がお金を借りやすいように金利を下げ、お金を大量に刷って市場に流通させている。安倍晋三首相は企業に給料を上げるよう呼びかける。

 こうした施策で足元の景気は回復基調にある。日銀の黒田東彦総裁は4月27日の記者会見で、「需給のずれ」はなくなったとの見方を示した。

 そして給料が増えた時、人々が将来に不安を感じずお金を使えるかどうか。日本経済が成長していくと期待し、「良いモノを安いうちに買う」動きが広がることが、デフレ脱却につながる。

(平本信敬)



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