譲歩にリスク 見えぬ展望 2016/12/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「譲歩にリスク 見えぬ展望」です。





 日ロ両政府は15、16両日の首脳会談で、新たな協力関係を打ち出した。北方四島での共同経済活動の検討開始が目玉だが、日本にとってはロシアに経済協力を食い逃げされるリスクをはらみ「一定の譲歩」との見方は多い。シリアやウクライナ問題で対立する米国の現政権や欧州には日ロ接近への警戒感が漂う。日ロ関係の再構築は世界情勢をにらんだ展開になる。

 期待値が高かったからか、今回の会談結果には「国民の大半はがっかりしている」(自民党の二階俊博幹事長)などと辛口の採点が目立つ。共同経済活動という「新しいアプローチ」はロシアが日本の主権を認めないまま日本がロシアの実効支配を事実上認めてしまいかねないとの懸念がロシア専門家から出ている。

 領土が返ってこなければ経済で手助けする必要がないとの強硬論とも安倍晋三首相は一線を画す。経済協力をテコに領土問題の解決につなげる「急がば回れ」戦術と言えるが、肝心の領土返還は展望が見えない。

 戦後71年がたち、平和条約を結べていない日ロは特異な関係にある。領土問題の存在が経済や安全保障で手を組む障害になってきた歴史だった。

 9月3日、ロシア極東のウラジオストク。首相は演説で前に座るロシアのプーチン大統領に「このままでは何十年も同じ議論を続けることになる」と訴えた。自分の世代で決着したいのは「戦後」を終わらせるとともに、経済と外交・安全保障の利点を狙うからだ。

 中国は海洋進出を加速し、北朝鮮は核・ミサイル開発をやめない。政局が混乱する韓国では反日政権が生まれる可能性もある。日本にとってロシアを取り込めば、外交上の選択肢が増える。

 リスクは消えない。百戦錬磨のプーチン氏が強気の姿勢をにじませるのはロシアに追い風が吹く国際環境があるからだ。原油価格は減産合意で反発に転じ原油安にあえぐ状況は一服している。

 ウクライナ問題で米欧が対ロ経済制裁で足並みをそろえてきたなか、米国ではトランプ次期大統領が親ロ姿勢を示す。プーチン氏の来日直前、トランプ氏陣営の外交顧問だったカーター・ペイジ氏はモスクワを訪れ、記者会見で「対ロ制裁政策は米欧とロシアの関係の害悪だ」と語った。

 首相が掲げる「8項目の経済協力」にはロシアの先食い懸念が残る。極東の経済開発を狙うプーチン氏と、領土問題解決に向けた環境を整えたい首相には温度差がある。ある日系商社の関係者は「日ロ関係の改善に伴う政治リスクの低減をロシアビジネスの前提にしている」となお不安視する。

 プーチン氏が首相に迫るのは「米国から独立した外交」だ。ウクライナ問題で経済制裁を科す米欧と日本を分断し、制裁の緩和を引き出したい思惑がにじむ。首相は安全保障で米国の抑止力を頼らざるを得ず、日米同盟を外交の基軸に据え、ジレンマを抱える。

 世界のパワーゲームはかつてなく激しく動く。対ロ政策は「世界の中の日ロ関係」の視点がより求められる。

(政治部 地曳航也)



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