象徴天皇と沖縄(下)歴史・文化理解深め島の人々に誇りと自信 2018/3/ 27 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の社会面にある「象徴天皇と沖縄(下)歴史・文化理解深め島の人々に誇りと自信」です。





 「沖縄に国立劇場をつくってはいかがでしょうか」。1993年4月、全国植樹祭のため沖縄を訪問した天皇陛下は同行した閣僚にこう切り出された。突然の提案に困惑する閣僚に対し、「沖縄の組踊は能、歌舞伎、文楽と同じく古来日本の伝統文化の一つです。それを教えていくのも大事なことだと思います」と説かれたという。

沖縄の古典芸能鑑賞のため、国立能楽堂を訪れた天皇、皇后両陛下(2014年4月、東京都渋谷区)

劇場設立へ機運

 その場に県議会議長として同席した儀間光男さん(74)=現・参院議員=が後日、県関係者の集まりで陛下の言葉を紹介。国立劇場おきなわ(浦添市)設立への機運が高まった。

 天皇、皇后両陛下を迎えてのこけら落とし公演が開かれたのは2004年1月。浦添市長になっていた儀間さんは「陛下の一言が無ければ、実現できなかっただろうという感慨がこみ上げた」と振り返る。

 陛下は劇場訪問を前にした70歳の誕生日記者会見で「(1972年に本土復帰した)沖縄の人々を迎えるに当たって歴史や文化を学び、人々への理解を深めていかなければならないと思っていた」と発言。沖縄に伝統芸能を受け継ぎ、振興する拠点ができたことを喜ばれている。

王朝に深い造詣

 陛下の沖縄文化への造詣は深い。「琉球王朝の2つの歴史書で、王に関する記述量に差があるのはなぜですか」。皇太子時代の75年7月、沖縄を初訪問した陛下はホテルに有識者を招いて懇談された。高良倉吉・琉球大名誉教授(70)は「専門書を読み込まなければできない質問をされた」と述懐する。

 2014年4月に国立能楽堂(東京)で両陛下を招いて開かれた沖縄古典芸能の公演。陛下は組踊の作者の名を挙げながら、案内役を務めた平田大一・元沖縄県文化振興会理事長(49)に次々と質問された。平田さんは「冷や汗をかいたが、感謝の思いで胸がいっぱいになった」。

 平田さんは1982年、本土復帰10周年を記念したレセプションに小浜島(竹富町)から豆記者団の一員として参加。このときにも陛下と対面している。横笛を使って島伝統の子守歌を演奏し「僕の島では笛に適した竹が採れます」と紹介すると、陛下は笑みを浮かべ、島の暮らしに関心を示されたという。

 陛下は過去10回の沖縄訪問で伊江島、宮古島、石垣島、久米島の離島4島にも足を運び、離島の伝統や文化にも触れられてきた。

 退位の意向を示唆したお言葉では「国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来ました」と言及された。

 かつては都会に憧れ、離島育ちに劣等感を抱いていたという平田さん。今は沖縄の子供たちとともに現代風にアレンジした組踊の舞台活動に取り組む。「あの時、陛下に島で生きることの価値を認めてもらえたことが自信となった。沖縄の島々の文化と歴史を子供たちに伝えていきたい」

榎本行浩が担当しました。



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