財政規律 問われているもの(2)社会保障費緩むタガ 2017/10/4 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「財政規律 問われているもの(2)社会保障費緩むタガ」です。





 日本の社会保障制度は持続不能だ。少子高齢化という誰の目にも明らかな現実に制度設計が追いつかない。費用を膨らませる余裕はとっくに失われている。

 「問題外、論外の話だ」。9月19日に自民党本部で開かれた厚生労働部会の終了後、厚労族の丹羽雄哉元厚生相は怒りをあらわにした。税と社会保障の一体改革の枠組みを変更し、教育無償化などに2兆円規模の財源を付け替える方針に不満を抑えきれなかった。

 借金で社会保障費を賄う状況を改め、財政健全化に踏み出す。日本の社会保障の転機となった一体改革は、当時政権を担っていた民主党(現民進党)と自民、公明の3党が膝詰めでまとめ上げた。各党を突き動かしたのは制度が持続可能ではないという危機感だ。

 高齢化で社会保障の費用は増加の一途。税と保険料を財源とする2015年度の給付費は一体改革をまとめた12年度より6兆円近く多い約115兆円に上る。団塊の世代が75歳以上になる25年度には150兆円に迫るという推計もある。

 多くのお金は高齢者のために使われている。給付費に施設整備費などを加えた高齢者向け社会支出を国内総生産(GDP)と比べると、日本は10%を超え、米国の6%、英国の7%、ドイツの8%を上回る。

 首相が打ち出した「全世代型社会保障」の考え方は、高齢者に偏る給付を現役世代にも回すという発想で、前向きな動きではある。しかし単に給付費を押し上げる要因になるとしたら、その評価はまた変わる。「後の世代に負担を回すだけでは、全世代型社会保障と言ってもごまかしでしかない」(日本総合研究所の西沢和彦主席研究員)

 75歳以上の医療費の窓口負担を現在の原則1割から2割に上げれば、1兆円規模の財源が生まれる可能性がある。高齢者の資産も加味した負担なども含め改革の方向性は見えている。各党は制度維持の覚悟を有権者に問うべきだが、聞こえの良い充実策の競い合いに終始しそうな雲行きだ。

 野放図な費用増加に一定の歯止めをかけていた政府目標のあり方が年末にかけて焦点に浮上する可能性もある。国の予算の社会保障費は30兆円を超え、自然増を16~18年度に計1兆5千億円に抑えることになっている。16、17年度の予算編成では辛うじて増加幅を5千億円以内に抑えた。18年度も最低で1300億円抑制する必要がある。

 ただ現実はこのタガが緩みかねない方向に進んでいる。財政再建の大目標が先送りされるなら、現役世代や高齢者への負担増や給付抑制を続ける意味はあるのか――。関係者の脳裏にはこんな疑問が浮かぶ。

 自民党の厚労族議員の一人は「高齢化で社会保障の需要が増えるのは当然」とした上で「ルールを律義に守れば必要な給付が行き渡らない」と強調する。

 来年度は医療と介護の公定価格である診療報酬と介護報酬の同時改定の年にあたり、年末までに改定率が決まる。加藤勝信厚労相は「(自然増を5千億円に抑える)目標達成に向けてしっかり取り組む」と予防線を張るが、社会保障の歴史にまたしても挫折の文字が刻まれることになるのだろうか。(小川和広)



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