財政規律 問われているもの(1)逃げ水の健全化 ツケ 先送り 止まらぬ膨張 2017/10/3 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「財政規律 問われているもの(1)逃げ水の健全化 ツケ先送り 止まらぬ膨張」です。





 日本の財政が心配だ。安易な借金頼みが続き、十分な規律が働いていない。膨らませるだけ膨らませれば、いずれはじけるのは確実。少子高齢化にあわせた社会保障制度の見直し、着実な成長をベースにした収入の確保といった、未来への安心感を高める工夫がいる。財政健全化が逃げ水のように遠ざかれば、その分、後の世代に回すツケは大きくなる。

 衆院選を控え、与野党問わず聞こえがよい話が広がっている。安倍晋三首相は「全世代型の社会保障」を掲げた。3~5歳の幼児教育・保育の完全無償化や、待機児童を解消するための受け皿整備など、若い世代への投資を手厚くするという。

 公明党は私立高校無償化を訴える。民進党の前原誠司代表も予定通りの増税に前向きで増収分を就学前教育の無償化と大学授業料減免の財源に充てる案を公約に明記していたが結局、増税凍結を打ち出した希望の党との合流方針を決めた。

使途変えても…

 政府は消費税率を8%から10%に引き上げる際、得られる5兆円強の財源のうち1兆円を社会保障に、4兆円を新たな借金減らしに充てると説明してきた。その4兆円の一部を教育無償化に回すという。「教育支出を赤字国債で賄うのと同じ」(第一生命経済研究所の熊野英生氏)。膨らむ借金のツケは未来に回る。

 日本の財政は年100兆円ほどの支出があり、税収で賄えるのは6割ほどにすぎない。足りない分は借金で穴埋めしなければならず、積み重ねた国と地方の借金は1000兆円を超える。経済規模に対する借金比率は主要7カ国(G7)の中で突出して高い。

 2012年に決めた社会保障と税の一体改革のキモは、消費税収をすべて社会保障に充てるという約束だった。教育投資の重要性はだれもが認めるが、無償化にかかる費用と得られる効果の検証は乏しい。

 税収でどれだけ政策的な経費を賄えるか示す基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)。これまでも黒字化目標は達成できなかった。今回は意味合いが違う。小泉政権が打ち出した11年度のPB黒字化は、金融危機を受け麻生政権が断念した。安倍政権は消費増税を2度延期。戦後2番目に長いという好景気でも届かなかった。

国のかたち映す

 増税で景気が冷え込んで税収が減れば元も子もない。といって、財政健全化を経済成長だけに頼るのは無理がある。16年度はプラス成長でも税収が落ち込んだ。健全化への近道はなく、成長と増税、歳出削減の3つをバランス良く組み合わせるしかない。

 鎮目雅人早大教授によると、日本の財政運営には大きな転機が2回あった。軍事大国に突き進んだ1930年代と、福祉元年として社会保障制度を急拡大した1970年代だ。30年代は経済成長を犠牲にし、70年代は過大な成長をあてにした。身の丈を超えた政策は財政悪化を招く。鎮目氏は「財政は国のかたちを映すもの。国がビジョンを誤ると、未来にツケを残す」と話す。

 いま、日本が抱える問題ははっきりしている。この20年で税収はほぼ横ばいだったのに対して、社会保障費は2倍以上に膨らんだ。歳出の増加分のほとんどを社会保障が占める。ここに正面から向き合わない限り、不安は消えない。日本は第2次世界大戦直後に財政破綻を経験した。歴史の教訓は生かすためにある。

(木原雄士)



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