足踏み景気(3)新興国の苦境鮮明 米中発リスクに揺れる 2015/10/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「足踏み景気(3)新興国の苦境鮮明 米中発リスクに揺れる」です。





 「3カ月前に比べて2割も高い。早く買っておけばよかった」。カザフスタンの首都アスタナの自動車販売店。会社員のバウルジャンさんは輸入車の値上がりを嘆いた。

輸出で稼げず

 同国は8月、通貨テンゲを変動相場制に移行させ、事実上対ドルの為替レートを約2割切り下げた。原油価格の低迷、隣国ロシアのルーブル急落に「主要貿易相手である中国の人民元切り下げが最後の追い打ちとなった」(経済官庁幹部)。景気の急減速に物価高が追い打ちをかける状況だ。

 2008年のリーマン・ショック後、世界経済の回復のけん引役だった新興国の経済が変調をきたしている。国際通貨基金(IMF)は6日改定した世界経済見通しで、新興国・途上国の成長率について15年が4.0%、16年が4.5%と予測をそれぞれ0.2ポイントずつ引き下げた。

 中国経済の減速で、新興資源国が頼みとする国際商品の相場が大きく下落した。米国の利上げ観測を背景とする新興国からの資金流出が加速し、各国で株安と通貨安につながった。

 通貨安は理屈としては輸出に追い風だが、短期的にすべての国が恩恵を受けるわけではない。ルピア安が加速したインドネシアは国際市場で競争力のある工業製品が乏しい。

 「メーカーが大幅な値上げを計画していて、私ら営業は大変なんです」。首都ジャカルタで取引先を回る自動車リース大手の担当者が息を切らして言った。企業は国内販売価格の引き上げで利益を確保しようと躍起で、輸出にシフトして稼ぐ体制は未整備だ。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「過去の米利上げ局面でも新興国は動揺したが、最後は米経済の持ち直しが支えた。今回は世界第2の規模に成長した中国経済の減速というこれまでにない要素が重なり、影響が複雑になっている」と分析する。

 新興国の厳しさにも濃淡がある。比較的安定感をみせているのがインドだ。インド準備銀行(中央銀行)は9月下旬、今年4回目の利下げに踏み切った。「金融緩和策の浸透に時間はかかっても、投資は強く反応するだろう」とラジャン総裁は話す。物価安定や経常赤字の縮小などが緩和の余地を生み出した。通貨防衛で利上げせざるを得なかったブラジルなどとの差は大きい。

世界経済に影

 中国減速の影は欧州にも広がる。ドイツでは8月の輸出額が前月比5.2%減と09年1月以来の大幅な落ち込みを見せた。シティグループのクリスチャン・シュルツ氏は「中国の不調はドイツの国内総生産(GDP)の2割強を占める資本財部門への打撃が最も大きい」と語る。

 頼みの綱は米国経済だ。7月のS&Pケース・シラー住宅価格指数(主要20都市)は前年同月比5.0%上昇と、38カ月連続で前年を上回った。ただ用地取得費用や労賃の上昇で建設会社の利ざやが縮小し、新規着工に慎重になり始めるなど足元には変調の兆しもある。利上げの影響を読み切れないことが最大のリスクだ。

 IMFのラガルド専務理事は「世界経済は不確実性を増している」と指摘する。新興市場を含む世界経済は米国の利上げと中国経済の減速という二大リスクに翻弄される展開となっている。

(景気動向研究班)



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