踊り場のROE経営(下) 資本コストを意識 市場との対話でも重要 2016/06/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「踊り場のROE経営(下) 資本コストを意識 市場との対話でも重要」です。





 「資本コストを上回る投資収益を上げる」。エーザイの柳良平・最高財務責任者(CFO)は、昨年夏に全社に導入した投資評価システムの狙いをこう強調する。

 仕組みはこうだ。投資先の国・地域やリスクの大きさなどに応じて、約200種類の割引率を設定。事業部門は決められた割引率を使い、投資案件から得られる現金収入の現在価値を計算する。現在価値から投資額を引いた金額がプラスならゴーサインが出る。

 割引率は全社の資本コスト(8%)に基づいて設定した。結果的に投資収益が資本コストを上回る案件だけが実行されるのがミソだ。

 自己資本利益率(ROE)と併せ、資本コストを意識する企業が増えている。資本コストとは株主から預かった資金(自己資本)にかかるコスト。株主が期待する最低限の投資収益率でもある。ROEが資本コストを下回る企業は、株主の期待に応えられず「株主価値を破壊している」(柳CFO)ことになる。

 資本コストの算出法には諸説あるが、日本では一般に7~8%とみられているようだ。日本株の過去のROEとPBR(株価純資産倍率)の関係をみると明確になる。ROE8%以下ではPBRは1倍前後にとどまり、8%を超えるとPBRは急に上がり始める。

 パナソニックも資本コストを重視する企業の一つだ。2017年3月期から、36ある事業部に対し資本効率の改善を促す新制度を導入した。

 同社は事業部ごとに資本コストを4~16%と定め、それを上回る収益を上げるよう求めている。事業部はそれぞれ貸借対照表を作り、本社から渡す資金も「負債」と「資本金」に区別して計上している。今期からこの資本金を事業部の判断で増減できるようにした。

 資本が余る事業部は本社に返還し、逆に大型投資などに踏み切る際は新たに調達する。従来は余剰の資本が事業部に積み上がっていた。新制度では資金を必要な部門に回し、グループ全体として資金を有効に使える。

 資本コストを投資家とのコミュニケーションに役立てる企業もある。

 「どうやってROEを高めるのかみえない」。丸井グループはかつて投資家の批判にさらされた。14年5月に発表した前回の中期経営計画でROE6%を目標に掲げたが、資料には目標が記載されているだけで具体策に乏しかったからだ。

 「市場と対話する中で何が足りないか理解できた」(青井浩社長)。17年3月期に始めた5カ年計画では、資本コストを7~8%と設定。自己資本比率を16年3月期の39%から30%前後に下げ、投下資本利益率を高めて「ROE10%以上を目指す」とした。投資家からは「財務戦略が明確で分かりやすい」と高い評価を得たようだ。

 一般的な7~8%の資本コストは投資家が求める最低ライン。生命保険協会が3月に公表した調査では、ROE10%以上を望む投資家が過半数に達した。上場企業の実績は大きく見劣りする。本業の収益力を上げてROEを高めるには時間がかかる。それまでは成長戦略や財務戦略を丁寧に説明し、投資家の理解を得る努力も必要になる。

 平沢光彰、増野光俊、富田美緒、湯浅兼輔が担当しました。



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