踊り場のROE経営(中) 募る投資家の不満 「高さ」と「質」の両立カギ 2016/06/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「踊り場のROE経営(中) 募る投資家の不満 「高さ」と「質」の両立カギ」です。





 「見た目の自己資本利益率(ROE)が改善するだけだ。長期保有の株主は損をする」。6月上旬、大阪市の関西ペイント本社を訪ねたある機関投資家は不満をあらわにした。やり玉に挙がったのは同社が1日に発表した「リキャップCB」と呼ぶ資金調達だ。

 新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行し、調達資金の一部を自社株買いに充てる。関西ペは1千億円の発行額のうち200億円を自社株買いに使う。一見、株主に配慮しているようだが、CBは将来株式に変わる可能性がある。これが嫌気され、発表翌日の株価は一時9%下げた。

 関西ペの石野博社長は「取得した自社株は将来の企業買収などに使う。残りの調達資金も成長投資に振り向ける」と強調する。だが、冒頭の投資家は「成長投資ならば普通社債で安く調達できるはずだ」と納得しない。

 リキャップCBは簡単にROEを上げられるとあって、2014年から発行が急増している。昨年までは発表直後に株価が急騰する例もあったが、最近は冷ややかな反応が目立つ。投資家は目先の経営指標の改善だけでなく、もっと先をみているようだ。

 企業が抱える余剰資金の活用ではどうか。今年3月に生命保険協会がまとめた調査で、企業の手元資金の望ましい使い道を機関投資家に聞いたところ、66.7%が「成長投資」と答えた。「株主還元の充実」(13.1%)を大幅に上回った。

 不要不急の資金を株主還元に回すことは正しい。だが、投資家は「持続的な企業価値の向上が見込める企業をより評価する」(仏運用会社コムジェストのリチャード・ケイ氏)。

 実際、本業の収益力を高め、長期間にわたり高ROEを続けている銘柄の値動きは良好だ。

 時価総額500億円以上の東証1部企業で、過去5年以上続けてROE8%以上だった175銘柄の株価を調べた。アベノミクス相場が始まった12年11月末を起点にすると、足元の株価は平均で2.6倍に上昇。同じ期間に1.6倍に上昇した東証株価指数(TOPIX)を大幅に上回った。

 175銘柄の平均の予想PER(株価収益率)は17倍強と、東証1部の平均(14倍)を上回る。それでも「こうした銘柄にはプレミアムが付いている」(ケイ氏)といい、割高感は意識されにくいようだ。

 例えば育児用品大手のピジョン。16年1月期のROEは21.3%で、8期連続で2桁を維持している。予想PERは36倍に達するが、年初来の株価上昇率は5%と底堅い。12年11月末との比較では5倍になった。

 ROEを経営目標に掲げる企業が増える一方、投資家の目も肥えてきている。米国では過去5年間に6兆1千億円もの自社株を買い入れ、ROEも突出して高いIBMの株価がさえない。本業の伸び悩みや財務悪化が警戒されているためだ。

 表面的な数値の改善だけでなく、実力も伴っているのか。国内でもROEの「質」を問う流れは一段と強まりそうだ。



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