身勝手なトランプ政権 欧州、徒労感漂う米なき国際秩序へ覚悟 2 017/7/10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「身勝手なトランプ政権 欧州、徒労感漂う米なき国際秩序へ覚悟」です。





 8日に閉幕した20カ国・地域(G20)首脳会議の開催地となったドイツ北部のハンブルク。湖のほとりに屈指の高級ホテル「フィア・ヤーレスツァイテン(四季)」がある。欧州外交筋でざわめきが広がったのは数カ月前。トランプ米大統領の宿泊を断ったからだ。

 独政府は地元自治体の迎賓館をあてがって騒ぎの収束に奔走したが後の祭り。地元紙は「治安上の理由」などと報じるが、欧州外交筋はしたり顔で解説する。「真意は米国への抗議だろう」。ホテルにエールを送る政府関係者は多い。

 保護主義に傾き、温暖化対策に背を向けたトランプ氏。「ドイツと欧州の利益を追求する半面、議長役として妥協を探らざるを得なかった」。それがG20閉幕後のメルケル独首相の第一声だった。もはや欧州は米国とのすれ違いを隠そうとしない。心理面でも政策面でも溝は深まるばかりだ。

 欧州に漂うのは徒労感。「トランプ氏は行動が予測不可能」。外交筋は口をそろえる。裏返せば信用できない。単独主義を捨て国際協調に戻るよう説得は試みるが、その気のないトランプ氏とは実のある合意には至らないとの感触を持つ。

 諦めムードの欧州は、トランプ政権とは是々非々でお茶を濁し、次の米大統領選までは国際協調の要を務める覚悟だ。トランプ政権が短命であってほしいという願望と、欧州が米国を代替するという野心が入り交じる。

 だからこそG20では欧州が参加国の「仲介役」になろうと腐心した。中ロにとって欧州の米国離れは都合がいい。それゆえ欧州の求めに応じる。

 中国の習近平国家主席はメルケル首相と北朝鮮情勢で意見交換。ロシアのプーチン大統領は独仏首脳とウクライナ問題を話し合った。同じように「仲介役」を買って出たメイ英首相や安倍晋三首相に出る幕はなかった。

 G20の議題を経済から、利害のぶつかり合う外交・安全保障にそろりと広げた欧州。それでも会議を仕切ることはできたが、弱みはある。

 伊政府はシチリア島に押し寄せる難民問題を取り上げるようにドイツに頼み込んだが、不発に終わった。周辺国との外交摩擦が懸念されるカタール問題も素通りし、調整能力の限界を露呈した。

 とはいえ募る対米不信で欧州は「米国なき国際秩序」を念頭に置き始めた。目指す方向は米国には防衛以外で頼らない「欧州の自立」だろう。安全保障分野で取り巻く状況が異なるとはいえ、2019年にG20議長役となる日本は思考停止でいいのか。米独仏ロ中。同じ顔ぶれの首脳が日本に集まる可能性が高い。

(欧州総局編集委員 赤川省吾)



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