転機の米金融政策(上) 成長期待市場に危うさ 新興国、 資本流出も 2016/12/17 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「転機の米金融政策(上) 成長期待市場に危うさ 新興国、資本流出も」です。





 米連邦準備理事会(FRB)が1年ぶりの利上げに動いた。イエレン議長はトランプ次期大統領の財政刺激策も念頭に、来年以降の利上げ加速の可能性も示唆した。最大の経済大国で動き出す金融政策の正常化と、財政出動による低成長打破の挑戦が、世界のマネーや経済に与える影響は計り知れない。

 「思ったよりも『タカ派』だったな」。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が公表された14日午後2時。ニューヨークの証券会社のトレーディングルームで、金融引き締めに積極的な中央銀行の姿勢を示す市場用語が飛び交った。

 2017年の利上げ回数の想定が従来の2回から3回に増えたからだけではない。イエレン氏はトランプ氏の財政刺激策を「詳細が分かる前に推測したくない」と述べ、市場に「政策が進む過程で利上げが一段と加速する」(米エコノミスト)という見方が広がった。

 「トランプ相場」に沸いてきた米株式市場。予想を超えたタカ派ぶりに大幅安となったが、15日には反発。すぐに動揺は収まった。政策転換への期待が勝った形だ。

 米国では大統領選後、財政出動による景気刺激と金融正常化の試みが並行して進む構図が急浮上した。市場がみせた反応は、内需拡大に対する期待に根ざした強烈な「株高、金利上昇、ドル高」という組み合わせだ。

 基軸通貨国の大転換は世界に大きな影響を及ぼす。格付け会社フィッチ・レーティングスのチーフエコノミスト、ブライアン・コールトン氏は「先進国には良い効果があるだろうが、一部の新興国では資金調達のコスト上昇や機会の低下が起こりうる」と分析する。

 日本には米内需拡大とドル高(円安)という二重の恩恵が及び、ドル高が響く米国よりも好環境との声もある。欧州も単一通貨ユーロの下落が進み、対ドルで02年以来のパリティー(等価)となる1ユーロ=1ドルも間近だ。欧州中央銀行(ECB)は買える資産に限界がみえるなかで量的緩和の縮小を決めたばかり。ユーロ安は追い風といえる。

 一方の新興国。海外からの資金調達に頼る国が多い分、米金利上昇やドル高は資本流出やドル建て債務の膨張を招きかねない。1年前、FRBが9年半ぶりの利上げに踏み切った直後には中国発で市場が混乱した。経済状況は改善しているが「リスクを注視しなければならない」(ティム・アダムズ元米財務次官)との声は絶えない。

 メキシコ銀行(中央銀行)はFRBの利上げ翌日の15日、0.5%の利上げを決めた。FRBに対抗し、通貨メキシコペソの急落やインフレ進行を抑える。米国がようやく今年1回の利上げにこぎつけたのに対し、景気停滞下のメキシコでは、すでに5回を数える。

 そもそもペソ安に弾みをつけたのは、成長の要である北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを唱えるトランプ氏だ。中銀は利上げの声明で「米国で(メキシコの)貿易や投資を妨げる経済政策が成立する可能性」に警戒感をあらわにした。

 米内需が拡大すれば、輸出増を通じた成長という道筋もみえる。だがトランプ氏の保護主義はその実現を危うくする。市場の陶酔の影で蓄積するリスク。世界経済の成長の道筋とマネーの落ち着く先は、なお霧の中だ。

(ニューヨーク=大塚節雄、山下晃)



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