軽減税率の論点(1)「益税」膨らむ懸念 現状でも5000億円が事業者の懐に 税額票導入には時間 2015/10/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「軽減税率の論点(1)「益税」膨らむ懸念 現状でも5000億円が事業者の懐に 税額票導入には時間」です。





 消費税率を10%に上げるとき一部の商品だけ税率を8%に据え置く軽減税率案作りが27日から与党で本格的に始まった。納税すべき消費税が事業者の手元に残る「益税」の防止、対象品目の線引き、財源の確保など論点は多岐にわたる。家計や企業の日々の経済活動に影響を与える軽減税率の論点を検証する。

 「軽減税率を導入すると、益税が大きくなっていくことは間違いない」。27日、1カ月ぶりに再開した与党税制協議会後、宮沢洋一自民党税制調査会長はこう語った。

免税業者500万超

 消費者が払った税金が事業者の財布に入ってしまう益税。公平の観点から長く問題視されてきた益税の原因は2つある。

 1つは「事業者免税点制度」と呼ぶ零細事業者向けの特例措置だ。この制度では年間売上高が1千万円以下の事業者はお客から8%分の消費税をもらっても税務署に納めなくてもよい。受け取った消費税と仕入れのときに払った消費税の差額が益税として自分の手元に残る。

 例えば、200円のモノを16円(8%)の消費税を払って仕入れた場合。販売時に300円で売って24円の消費税をお客から受け取ると、差し引き8円が残る。免税事業者は納税義務がないので益税として事業者の懐に入ってしまう。

 財務省によると、国内にある約800万の事業者のうち500万超は免税事業者だ。仮に免税事業者がなくなりすべての事業者が納税すれば、国・地方を合わせた消費税収はいまより約4500億円増えるという。

 売り上げが1千万円を超えても5千万円以下なら益税がある。業種ごとに売り上げに占める仕入れ額の割合(みなし仕入れ率)を推計し、簡単に納税額をはじく簡易課税制度。これが益税の2つめの原因だ。

 「みなし仕入れ率が実態より高い」。12年に調査した会計検査院はこう指摘した。

 みなし仕入れ率が高いほど仕入れ時にたくさん消費税を払ったとみなされる。受け取った消費税と実際に払った消費税の差額である益税が増える。検査院によると、運輸・通信業などは実際の仕入れ率が32.4%だったのに対し、みなし仕入れ率は50%と乖離(かいり)していた。

 鈴木善充近畿大講師の推計によると、益税の規模は総額で約5千億円。消費税率1%分の税収2.7兆円の2割弱に相当する。

不正の温床に

 現行制度のまま消費税率を10%に引き上げ、同時に軽減税率を入れた場合、何が起きるのか。

 まず、消費者から受け取る税金が増え益税が増えやすくなるので不正が増える。東京都内のある飲食店オーナーは証言する。「お客さんから消費税は受け取っているが、うちはレジがない。領収書を書いていない伝票をゴミ箱に入れれば売上高を操作できるし誰もわからない」。消費税率が高くなるほど、こんな脱税が横行し免税事業者になろうとする動きが活発になる構図だ。

 8%の軽減税率で仕入れた商品を10%の標準税率で仕入れたことにするケースも増えそうだ。仕入れ時にたくさん消費税を払ったことにした方が、益税が増えるためだ。税率が上がり、品目によって税率が変わると益税の規模は膨らむ。

 これを防ぐにはあらゆる商取引に商品ごとの税額を表示する厳格なインボイス(税額票)を入れる必要がある。だが、宮沢会長は「(公明党が提案した簡易型の税額票も含め)2017年4月の消費増税時の導入は難しい」とする。中小企業の事務負担が大きいと見ているためだ。

 与党は税額票の導入時期を20年ごろにする考えだが、遅れるほど益税が増える懸念がある。事業者の事務負担が増えず益税も膨らまない制度。与党はそんな経理方式を11月中旬までに打ち出す必要に迫られている。



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