辛言直言 世界で生きるための教育を 価値観変わる体験させよ 日本電産会長兼社長 永守重信氏 2016/01/13 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「辛言直言 世界で生きるための教育を 価値観変わる体験させよ 日本電産会長兼社長 永守重信氏」です。





 大学の役割を巡る議論は今年も活発化しそうだ。教養教育が重要との指摘がある一方、グローバル化に対応した人材育成が不十分との意見も強い。日本電産の永守重信会長兼社長は2014年11月から京都大学の総長顧問を務めるなど、大学への発言も積極化している。自ら創業した会社をグローバル企業へ成長させた経営者の視点から、日本の大学教育への要望を聞いた。

 ――日本の大学の現状をどのようにみていますか。

 「京大で講義もしたが、質問してくるのは中国やタイからの留学生ばっかりだ。日本の学生は『単位をもらえればいい』とばかりに静かにしていて明らかに熱意が違う。アジアからの留学生は母国に帰って起業しようとか、起業できる会社に入ろうなどと考えて、何かをつかもうとしている

 「日本の大学は世界ランキングで順位が低い。評価方法に問題があるとも聞くが、日本の学生にも、起業しようとか、海外で何かやろうといった意識をもっと持たせられないものか。海外のインターンシップにどんどん行かせるとか、価値観が変わる体験をさせてほしい

起業の意欲弱い

 ――大学もグローバル対応などの変化は掲げていますが。

 「今でも学生の就職人気ランキングには有名な大企業が、業績がよくなくても上位に並んでいる。すぐに起業しないとしても、これから伸びる会社に入って大きくしようとする学生がなぜこんなに少ないのか。大学の先生がインターンでも就職でも大企業を勧めているのではないか」

 「大学と実業界の人の行き来をもっと活発にしないといけないだろう。成績がいい学生が助手になり、そのまま教授になっていては実社会のことがわからなくなる

 ――大学には実学よりも基礎的な教養を重視すべきだとの声もあります。

 「教える順番が大事。英語の難しい文法を教える前に、しゃべれるようにするとか、まずは世界で生きていくための教育をしっかりやるべきだろう。30年くらい前と今では日本の大学の置かれた状況が違う。大学生がある程度希少だったころは一般と違う教育に意味があった。大学生が増えた今は、特に難しい学問は大学院でやる方がいい」

 「大学の中には研究が開発より格上とか、開発は生産技術より上というような意識があるようだ。一流大卒は研究か開発部門に入りたがる。仕事に順位を付けるような意識が一番の問題だろうと思っている」

 ――そうした問題は企業側でどう感じますか。

 「実は私もこの10年くらい錯覚していた。会社が大きくなったんだから立派な大学の出身者を増やそうと中途を含め積極採用してきたが、最近実績が目立っているのは、この間我慢をしていた一流大卒でない社員が多い。人生というあみだくじは1本の線を進んで失敗しても、諦めずに次に行けばもっと幸せになることもある。こんな経験をした人材の方が強い

入試で疲れ切る

 ――入学試験からもっと変えるべきだという声もあります。

 「最近の学生は入試の段階で疲れきっている。教え方のうまい塾に入ってテクニックを必死に覚え、一流大学に入っているのだろう。入った時がピークなのではなく、これから目標を持って頑張ろうとする人にチャンスを与えてほしい

 「僕は塾も行かず受験勉強もせず、学校から帰ったら家の手伝いをしていた。それでも勉強ができて、国の奨学金で職業訓練大学校(当時)に行かせてもらうことになった。亡くなった兄は『本当は京大に入れたのになあ』と後々も気にしながら、『でも入れずに頑張ったから今がある。感謝せえよ』と何度も言っていた」

 ――16年春卒の学生の就職活動の日程が混乱しましたが、どうすればいいと考えますか。

 「(15年春卒までの就活のように)4月1日の選考開始に戻すのがいいと思う。中堅企業から先に内定をもらっても(8月の)大企業の選考開始まで決めないといった状況が、非常に混乱のもとになった。新卒の一括採用には若者の雇用確保などで利点もあるとは思うが、例えば初任給については米国のように大学を卒業した時の経験などで差がつくとなれば、学生の卒業までの意識も変わるのではないか」

(大学面編集長 福田芳久、京都支社 太田順尚)

 「辛言直言」は随時掲載します。

 ながもり・しげのぶ 1944年京都府生まれ、67年職業訓練大学校(現・職業能力開発総合大学校)電気科卒。ティアックなどを経て73年に日本電産を創業し、社長に就き急成長をけん引。2014年から会長兼務



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