辛言直言 文理のあり方(上) 理系学部、英語を公用語に 米カリフォルニア大教授 中村修二氏 2015/07/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の大学面にある「辛言直言 文理のあり方(上) 理系学部、英語を公用語に 米カリフォルニア大教授 中村修二氏」です。





 青色発光ダイオード(LED)の開発でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏は、米カリフォルニア大の教授として61歳の今もレーザー照明の研究開発の最前線に立つ。政府は世界最高水準の研究力・教育力を備えるための大学改革を目指している。英語習得で苦労したという中村氏に、実体験などから世界に通用する理系の高等教育の課題について聞いた。

 ――一連の改革の中で、政府は英語教育を強化する方針を打ち出しています。理系のグローバル人材育成に役立つでしょうか。

 「正しい方向だが、まだ全く不十分だ。世界をみると理系や文系を問わず最先端で活躍している層の大半は英語が流ちょうだ。そうした一流の人材と渡り合って認められるためには高いレベルの英語習得が不可欠だ。英語教育のレベルの低さのせいで日本は世界のグローバリゼーションの波から置き去りにされている」

島国根性改めよ

 「まだ日本の多くの大企業では英語が上手だと『あいつは語学屋だ』と嫉妬されることが多い。そんな企業文化のせいで家電メーカーなどは長く国内市場にとらわれ、欧米や中韓の企業に世界のマーケットシェアを奪われる結果となった。日本はまずこうした島国根性を改める必要がある」

 ――日本の研究者の英語力を高めるためにどのような施策が必要でしょうか。

 「少なくとも理系の学部では英語を公用語と位置づけて、学内でしゃべるときは英語に限るなどラジカルな改革が求められる。子どもが人生の早い段階で集中的に英語教育を受けられる機会を増やさないといけない。家族とともに海外で語学を習得するための休職制度を企業に設けるのも一案だろう。米国では子どもに新たな語学を身につけさせるため家族ごと外国に1年くらい移り住む例は少なくない」

 ――政府内では研究者の海外流出を懸念する声も聞かれます。

 「そういう心配をする人はグローバル化の意味をわかっていない。意欲がある優秀な人材がどんどん国外に出て活躍するのはむしろ望ましいことで、結果的に日本のためになる。私も海外で働くことで日本に貢献していると自負している」

 「何でも日本において日本人で全てやろうという考えを捨てなければいけない。日本人のノーベル賞受賞者を増やすべきだという議論も意味があるとは思えない。世界経済や人の流れがこれだけボーダーレスになっているのに、日本だけが突出して自国に強いこだわりを持ち続けている」

恵まれた点も

 ――一方、海外から見て日本の高等教育の強みはどこにあるのでしょうか。

 「国民性や道徳教育のおかげで日本人は世界のどの国民と比べても極めてまじめだ。研究開発のために必要な装置や機材を特注すれば、日本企業はきちっと与えられた図面通りに期限内に作ってくれる。米国ではそんな事例はほとんどない」

 「日本の研究者はこの点、非常に恵まれており、日本は今後も世界のイノベーションセンターの一つであり続けるだろう。ただ、新たな技術を開発しても、世界に売り込む人材が不足していたら激しいグローバル競争で負け続ける。モノ作りを商売よりも上位に置く江戸時代以来の身分制度の意識を変える必要がある」

 ――日本の暗記中心の大学受験の弊害をかねて指摘されています。

 「受験のために求められる激しい暗記作業が最も大事な生徒の学問への興味や意欲、創造性を損なう結果となっている。未開地で様々な壁をぶち破っていく人間を育てないと日本経済も大きな成長は見込めないが、異能の人材にとって息苦しい画一的な日本の教育制度ではそうした起業家タイプの人材は育ちにくい」

 ――日本のベンチャー企業育成の必要性を訴えられていますね。

 「日本ではベンチャー企業はまず国内で成功した上で海外に向かうというパターンが大半だ。私は米国で2つのベンチャー企業を経営しているが、立ち上げ段階から当然のように世界市場に照準を合わせている。ドイツや中国、台湾、シンガポールの起業家も同様だ。日本の若い世代には最初から世界進出を視野に起業してほしい」

(サンクトペテルブルクで、田中孝幸)



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