迫真 アマゾン・エフェクト1 垣根越える買収「怖い」 201 7/11/6 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 アマゾン・エフェクト1 垣根越える買収「怖い」」です。





 「シアトルに飛べ」

 9月7日、米アマゾン・ドット・コムが第2本社の設置を検討しているというニュースを聞いた米イリノイ州知事のラウナー(60)はすぐに誘致の特別チームを編成し指示を飛ばした。

 同州には現在、約630の日本企業が進出し約5万人が働く。だがアマゾンは第2本社だけで同じ5万人の雇用を生むという。ラウナー自らもアマゾン幹部に交通インフラの充実などを電話で直接訴えた。

 狂騒曲は北米全域に広がる。ニュージャージー州は知事が70億ドルの税制優遇を約束。アマゾン本社があるワシントン州も誘致に動いた。カナダのトルドー首相(45)もアマゾンの最高経営責任者(CEO)、ジェフ・ベゾス(53)に同国の魅力を訴える書簡を送った。10月19日の締め切りに集まった自治体からの提案書の数は238に上る。

 膨張するネット小売りの巨人、アマゾン。6月16日に発表した食品スーパーのホールフーズマーケット買収で、その存在感はさらに高まった。

 生鮮品の宅配代行ベンチャー、米インスタカートのCEO、アポルボ・メタ(31)はその日のことを鮮明に覚えている。「発表直後にある大手小売りの幹部から電話がかかってきた。緊急役員会を開きスーパーも宅配を考えないとダメということを話し合ったそうだ。『アマゾンがやって来た』。誰もがあの時そう思ったはずだ」

 アマゾンが進出すればその業界の秩序がゆらぐ。「アマゾンショック」は全米のどこかで毎日のように起きている。

 年末商戦を控えたニューヨークの繁華街タイムズスクエア。一角にある米玩具販売大手トイザラスの店舗「ホリデーショップ」は、周りの騒がしさと比べると人影もまばらだ。9月18日に連邦破産法11条の適用を申請した影響が及ぶ。

 夫と店舗を訪れていたカーラ・ベキオーネは「2人の息子のクリスマスプレゼントのために商品を見たが、買い物はアマゾンでするわ」と語る。最近は年会費が必要だが、2日で配送してくれる同社のプライム会員になった。「田舎暮らしの私たちにとって、これ以上便利なものはない」

 クレディ・スイスによると米小売業は過去5年で1万4千を超える店舗が閉鎖した。17年は8640店舗が閉じるとみられている。1990年代には玩具業界の先進企業だったトイザラスもこの流れから逃れられない。

 7月、米家電大手ベストバイの株価が急落した。担当者を家庭に派遣する家電設置サービスをアマゾンが手掛けるとのニュースが流れ、同じサービスをするベストバイに連想売りが集まった。

 その前月には薬の販売にアマゾンが乗り出すと報じられ、ドラッグストア企業の株価が軒並み下向いた。実際に参入が起きていなくとも、その影がちらつくだけで関連業界は身震いする。

 競争すらも放棄した企業もある。米百貨店大手コールズのロサンゼルス郊外にある店舗。中に入ると店員が話しかけてきた。「ここにあった衣料品ならもうないわよ」

 同店は衣料品売り場を改装し、10月18日から会話型スピーカー「エコー」などアマゾン製品を売りはじめた。いまやネット小売りの製品を実店舗企業が売る時代に。「うちも買収されたりして」と店員はおどける。

 ネットとリアルの垣根を越えて膨張を続けるアマゾン。この先に待っているのは業際をまたいでさらに膨らむ経済圏だ。

 「アマゾンが怖くて夜も寝られない」。広告世界最大手WPPのCEO、マーティン・ソレル(72)は今春、米紙のインタビューに漏らした。

 デジタル広告の世界はグーグルとフェイスブックが2強だが、ネット販売のユーザー増とともにやがてはアマゾンのサイトは巨大な広告プラットフォームになり得る。代理店にとってこれ以上プラットフォーマーが増えて中抜きが進むことは耐えがたい事態だ。

 「事業を水平に展開し、ライバルとの競争はそれぞれ垂直に深く取り組む」。ジェフ・ベゾスの側近で、小売り担当副社長のジェフ・ウィルケがよく使う言葉だ。アマゾンの代名詞「エブリシングストア(すべてを扱う店)」の実現に向け、巨人の歩みは当分とどまりそうにない。(敬称略)

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 競合をなぎ倒す「アマゾン・エフェクト」が広がる。企業も消費者も存在を無視できなくなったアマゾンの今を追う。



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