迫真 スマホがあれば十分 黎明ミレニアル経済 2017/1/5 本 日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 スマホがあれば十分 黎明ミレニアル経済」です。





 年の瀬も押し迫った昨年12月23日昼すぎ。東京の西八王子駅に停車したスズキ「ワゴンR」にバックパックを背負った20代の大学生が乗り込んだ。目的地・熱海までの乗車料は2千円。「夜行バスを使うより安いし、ドライバーと話すことが楽しい」。3回目の利用となる学生は話した。

「ノッテコ」の東社長は地方での規制緩和を要望中だ(東京都八王子市)

 現代版ヒッチハイクの「ノッテコ」。ネット上で空席を持て余しているドライバーと相乗りしたい人をマッチングする。ドライバーが謝礼をもらえば法律で禁じられた白タク営業だ。そこでタクシーと競合しない長距離限定とし、受け取るのはガソリン代と高速代の実費分だけ。運輸規制の間隙を縫う商売だ。

 2016年7月末の利用者数は2万5千人を突破。見えざる相乗り市場は成長を続ける。社長の東祐太朗(27)は「バス路線が失われた地方では中距離での参入を認めてほしい」と規制緩和を要望中。バス事業者らの寡占を崩すアリの一穴かもしれない。

 モノの所有にこだわりはなく車でも子供服でも迷わずシェア(共有)する。庭掃除や動画作成まで自らを労働力として提供。消費者とつながるにはスマホがあれば十分だ。ミレニアル世代が主導するのはこんな「つながる経済」。オンラインで単発の契約や雇用関係を結ぶため米では短期請負を意味するギグ(gig)エコノミーと呼ばれ、日本の潜在力も大きい。

 時代の先を読みいち早く市場でシェアを確立できるかがミレニアル経済の要だ。「生活を変える商品を作りたい」。昨年12月初旬に資生堂などと資本・業務提携したドリコス代表の竹康宏(29)は慶応大助教の経歴を持つ異色の経営者だ。専用端末に指をかざすと脈拍などから疲労度合いを解析し栄養素を自動配合するサプリサーバーを開発。国の医療費抑制が進む中で生活習慣病予防ビジネスの成長性に賭ける。

 スマートドライブ社長の北川烈(27)は車のデバイスで送信した走行距離などのデータで保険料が変わる自動車保険を開発。仏アクサと金融庁に認可を申請中だが「既存業者に配慮しているのか認可に至らない」。規制の壁はぶ厚い。でも自動運転普及などで保険市場は将来一変するとみる。

□   □ ミレニアルという言葉の発祥地、米国はオンライン経済ではるか先を行く。昨年12月、米テスラモーターズ直営のパロアルト店。店内には値札もなければカタログもない。あるのは展示車などだけ。購入はネットで完結するためだ。まるでファッションブランド店のショールームだ。店頭にいた自営業のティム・トリ(35)は「テスラならネットで買ってもいいね」。自動車ですら、ネット購入する時代が実現している。

 自家用車で人を運び対価を得るウーバーテクノロジーズや民泊仲介のエアビーアンドビーは今や「老舗」。往診などの医療や法律相談もオンライン契約は当たり前だ。こうした「ギグ産業」で収入を得る人は直近3年間で10倍に増え140万人に上ったとの試算がある。米労働者人口の1%ほどでも、25年までに400万人のフルタイム雇用を生むとの見方もある。

 「サービス業では稼働率を平準化させ、消費者は時間を有効に使える。日本経済全体の生産性が高まる」。経済産業研究所副所長の森川正之は車などの共有型経済の効用を評価する。モノが売れなくなる分はサービス消費に回り、成長の足かせにはならないという。

 急成長ゆえの課題も多い。ウーバーやノッテコのドライバーは従業員なのか請負人なのか。米国では雇用区分を巡って訴訟が多発。団体交渉権や医療保険、企業年金など様々な制度を揺さぶる。日本でもシェアエコノミーを受け入れる法規制が整っておらずウーバーは本格参入できない。民泊の規制整備も途上だ。

 シェアエコノミーなどの躍進で、大量生産・大量消費を前提とする資本主義経済は変質し始めている。デジタルの申し子たちは、次に何を変えるのか。(敬称略)

 ▼ミレニアル世代 英語で千年紀を意味する「millennial」が語源で、2000年以降に成人や社会人になる1980年以降生まれの若者世代を指す。



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