迫真 トランプ大統領100日(1) 娘婿は「陰の国務長官 」 2017/5/9 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 トランプ大統領100日(1) 娘婿は「陰の国務長官」 」です。





 4月29日夕、米東部ペンシルベニア州ハリスバーグ。建築用具の生産ラインが並ぶ工場に、大統領就任から100日の節目を迎えたドナルド・トランプ(70)の姿があった。

 「『メード・イン・USA』がどんどん戻ってくるぞ。雇用や富、夢をかつてないほど取り戻すんだ」。熱弁を振るうトランプの傍らに大統領首席戦略官・上級顧問のスティーブン・バノン(63)がいた。この場でトランプは全ての通商協定の見直しを視野に点検する大統領令にサインした。

 「ラストベルト(さびついた工業地帯)」と呼ばれる同州で、共和党は昨秋の大統領選を28年ぶりに制した。経済的に追い詰められた白人層の怒りというトランプ勝利の原点を確かめる100日目の演出は、その立役者であるバノンが仕切った。

 だがホワイトハウス内の景色と空気は異なる。大統領執務室から書斎を挟み西に数メートル。トランプに最も近い場所に部屋を陣取るのは長女イバンカ(35)の夫で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー(36)だ。バノンのオフィスは、さらにその奥の西隣にある。

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 バノンとクシュナー。トランプを支える最側近と目された2人は、4月6、7両日にあった初の米中首脳会談で深い溝を隠しようがなくなった。

 クシュナーは対中強硬派のバノンを差し置き、駐米中国大使の崔天凱(64)との調整を重ねて対中協調路線のレールを敷いた。幻に終わったものの、共同声明の文案をやり取りするまでの関係を築いた。フロリダ州のトランプの別荘での夕食会で、バノンが座ったのは末席だった。

 「君にしか中東に平和をもたらすことはできない」。トランプは歴代大統領が取り組んできた難題である中東和平交渉もユダヤ系米国人のクシュナーに委ねる。「陰の国務長官」。米メディアはクシュナーをこう呼び始めた。

 父親が民主党に多額の献金をしたことがあるクシュナーは自身も根がリベラルでバノンを「ナショナリスト」と呼ぶ。バノンは嫌悪感を込めて「ニューヨーカー」とクシュナーの陰口をたたく。ニューヨークのビジネス界で成功し、現実主義で妥協もいとわない手法が姑息(こそく)と映る。

 「トランプは常に勝ち続けている人間が好みなんだ」。ある政権幹部は解説する。イスラム圏からの入国制限令で失態を演じたバノンに対し、クシュナーに目立った失点はまだない。

 「夕食をどうだ」。妻子をニューヨークに残すトランプは最近、夕方になると独身の国防長官マティス(66)を頻繁に誘う。政権発足直後、バノンがまとめた入国制限令をマティスは当日まで知らされなかった。テロ掃討作戦で連携するイラクまで対象としたのに反発し、その後除外させた。

 政権内の軍出身幹部もトランプの身内と足並みをそろえてバノンを脇へ追いやる。バノンに近かった国家安全保障会議(NSC)担当の大統領補佐官、フリン(58)がロシアとの癒着疑惑で辞任。陸軍中将のマクマスター(54)は人事権を持つ約束を得て後任に就き、バノンをNSC常任委員から外した。

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 「人の話をよく聞くんだ」。首相、安倍晋三(62)が周囲に語るトランプ評だ。「何かあれば連絡をとろう」。2度の会談を経て、こんな関係を築いた両首脳は4月だけで4回も電話で話した。

 北朝鮮封じ込め、シリア攻撃――。「身内+軍人」ラインが主導し、孤立主義から「世界の警察官」ぶりを発揮する現実路線への転換に同盟国は安堵する。だが「バノン外し」には「米国第一」が色あせ、トランプの中核支持層が離れるリスクも同居する。

 「どうだい。こんなに赤が多いんだぜ」。トランプは執務室の机に1枚の地図をしのばせている。大統領選で民主党候補ヒラリー・クリントン(69)が獲得した州を青、自身が得た州を赤で色分けした。今もなお来訪者に得意げに見せている。

 信任投票となる来年の中間選挙でも赤く染められるか。トランプは1日、バノンとクシュナーの確執について米メディアに語った。「一部のスタッフの関係が少しとげとげしい時期もあったが、私が協力するよう言った」。火種を抱えたままの側近の権力争いの行方はトランプの立ち位置と命運を決定付ける。

(敬称略)

 世界を揺るがすトランプ米大統領。政権発足100日の足取りから新たなステージを占う。



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