迫真 トランプ大統領100日(2) 議会操る大富豪 2017/5 /10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 トランプ大統領100日(2) 議会操る大富豪」です。





 ドナルド・トランプの米大統領就任100日を目前にした4月26日、袋小路に入りかけていた2つの目玉経済政策が突然動き出した。

コーク兄弟の兄チャールズ氏=ゲッティ

コーク兄弟の弟デビッド氏=ゲッティ

 この日、財務長官のスティーブン・ムニューシン(54)らは連邦法人税率を35%から15%に下げる大減税案を打ち出した。もう一つは3月末に下院採決を断念した医療保険制度改革法(オバマケア)見直し法案。反対してきた共和党の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」が「完全ではないが支持する」と一転賛意を表明した。

 2つの動きは偶然ではない。裏にあるのは輸出を免税して輸入は課税強化するしくみの「法人税の国境調整」を巡る暗闘だ。共和党・下院指導部の税制改革案の柱だったが、トランプはばっさり削り落とした。

 この国境調整案に手厳しく反対してきたのが自由議連のスポンサーとされる資産家、コーク兄弟だ。米エネルギー複合企業、コーク・インダストリーズを経営するチャールズ(81)、デビッド(77)の兄弟は共和党の巨額献金者。米経済誌によると資産総額はともに483億ドル(約5.5兆円)で世界長者番付8位。544位のトランプをはるかに引き離す大富豪だ。

 「税制改革案は大きく飛躍した」。コーク兄弟が資金を拠出する政治団体は、すかさずトランプ税制をたたえる声明を出した。国境調整が導入されれば輸入原油が大きく値上がりし、石油精製業には打撃となる。

 コーク兄弟は自由経済を重んじる「リバタリアン」でオバマケアの完全撤廃を求める。米メディアによれば、兄弟の関連財団は撤廃に向け動く議員に「次回選挙で巨額の資金を出す」と持ちかけていた。「リバタリアン」の富裕層ネットワークは来年の連邦議会選挙までに数億ドルの資金を投じる用意があるとされ、議会を操る力は甚大だ。

 5月4日に下院を通過したオバマケア代替法案は緊縮財政派と弱者保護派が妥協を重ね、制度が極めて複雑になった。トランプを支持した白人労働者も含めて無保険者が増える可能性があり、社会的な混乱も避けられない。上院は早くも法案修正に動き、トランプは「我々の医療保険制度は素晴らしい!」と誇るが、実現はまだ見通せない。

 市場は昨秋の選挙でホワイトハウスと上下両院を共和党が独占したのを好感した。だが「決められない政治」が続けば、その期待はしぼむ。

(敬称略)



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