迫真 勃発貿易戦争(4)安保カードに揺れる 2018/4/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 勃発貿易戦争(4)安保カードに揺れる」です。





 「真意はなにか」。13日早朝、環太平洋経済連携協定(TPP)首席交渉官の梅本和義(66)は慌てて部下に確認を指示した。枕元の携帯電話に米国の友人から米大統領ドナルド・トランプ(71)に関するメールが届いていたためだ。「TPPへの復帰検討を指示したようだ」

トランプ米大統領は安倍首相の隣で「2国間交渉がよい」と言い切った(18日、米フロリダ州)

 米通商代表部(USTR)代表のロバート・ライトハイザー(70)は3月下旬に「日本には自由貿易協定(FTA)交渉を求めている」と明言していた。米国抜きの11カ国でまとめたTPP11の内容をトランプがのむことは考えにくい。しかし何らかの理由で翻意し、米国がTPPに戻るなら、2国間交渉への圧力は薄まるかもしれない。

 だが5日後には日本の希望はあっさり打ち砕かれた。「私はTPPには戻りたくない。2国間協定が良い」。トランプがこう言い切ったのは18日の日米首脳会談後の共同記者会見。傍らには首相の安倍晋三(63)が厳しい表情で立っていた。

 米国との2国間交渉が不利なことは歴史をみれば明らかだ。貿易赤字の是正を叫ぶトランプの姿をみるにつれ、経済産業省幹部は1970~80年代の貿易摩擦を思い出す。米国に輸入制限などの強硬策をちらつかされた日本は、まず繊維の輸出自主規制をのんだ。続いて農産物、自動車で摩擦が起き、米国で日本たたきが広がった。

 交渉で日本がどんなに経済合理性を訴えようと、「安全保障を考慮して経済で譲歩を求められるのが過去の苦い現実だった」(米国との交渉に関わってきた元経産省幹部)。いつか来た道をまたたどるのか――。

 米韓FTA再交渉で韓国に不利な条件をのませたのは在韓米軍の撤退を示唆した米国の「安保カード」だった。農林水産省幹部は「日本は北朝鮮や中国を前に丸裸になれない」と同様の展開になることを懸念する。

 安倍は日米首脳会談から帰国後、「あれがあったから踏みとどまった」と周辺に漏らした。「あれ」とは日本が提案した米国との新しい通商対話の枠組みのこと。従来の日米経済対話に不満を持つ米側の矛先を緩める作戦。首相周辺は「今回はなんとかしのげた」と漏らした。

 11月に米中間選挙を控えたトランプが日本から成果を得たいのは間違いない。ひたひたと近づく貿易摩擦の足音に外務省幹部は警戒感を隠さない。「日米経済対話は何もやらなかったという意味でうまくいきすぎた。新たな対話での先送りは許されないだろう」

(敬称略)



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