迫真 半導体、異次元の攻防 顧客までサムスン詣で 2018/1 /8 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 半導体、異次元の攻防 顧客までサムスン詣で」です。





 新年を迎え零度以下と冷え込む韓国、ソウル近郊の華城市。グーグル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムの担当者が連日のようにサムスン電子の半導体工場を訪れる。「最新DRAMは当社に供給を」。米3社は昨年中にそれぞれ近隣に拠点を設置済み。常駐する営業担当がサムスン詣でを続けている。

ソウル郊外のサムスン電子のメモリー工場

 サムスンの巨大工場の周辺は日米の製造装置、素材のメーカーが拠点を設け、技術的な擦り合わせや生産量に合わせた出荷計画を決めてきた。これらはサムスンにとって調達先だ。半導体を供給するIT(情報技術)大手という顧客までもソウルに吸い寄せる力をサムスンは身につけた。

 立場を強めるのはスマートフォンで見る動画やデータセンターに欠かせないメモリーの需要が爆発的に伸びているため。検索やネット通販で集めたデータを格納したり、大容量動画を配信したりする需要は加速度的に拡大。世界半導体市場統計(WSTS)によるとメモリーの市場規模は2017年に1229億ドル(約14兆円)と、16年比6割増えたもようだ。

 サムスンは処理の速度は速いが電源を落とすとデータが消えるDRAMで世界シェア47%、電源を落としてもデータが残るNAND型フラッシュメモリーで35%。2品目ともに首位に立つ。

 「クラウドや人工知能(AI)によりデータは爆発的に増える。半導体市場がどれだけ成長するか想像できない」。半導体製造装置大手、米アプライドマテリアルズの韓国法人社長、姜仁斗(カン・インドゥ、60)は17年12月14日にソウルで開いたセミナーで好況は18年以降も続くとの見方を示した。AIを扱うサーバーのメモリーは4倍の性能が求められ、市場は「2、3倍に伸びる可能性がある」と訴えた。

 メモリーは価格が上下動しながらも着実に市場を広げてきた。パソコン、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン――。家電のデジタル化に伴い、1段階ずつ新たな用途が生まれてきた。

 それが今、大量にデータをためる幾つもの使い方が同時に現れ、一足飛びに市場が伸びる。あらゆるモノがネットにつながるIoT時代を迎え、記憶するデータはますます増える。

 17年12月初旬、華城市にあるサムスンのメモリー事業部は沸いていた。この年4回目の賞与が同部の社員にだけ支払われた。日本円換算で平社員が約100万円。30代後半で1千万円超の年収はさらに積み上がった。

 10月まで半導体統括役員を務めたサムスン総合技術院会長の権五鉉(クォン・オヒョン、65)は17年上半期だけで約14億8千万円の報酬を受け取っている。信賞必罰が徹底しているサムスンで半導体事業を率いる幹部の報酬は青天井のようだ。

 だがメモリー市況はいつ需給バランスが崩れるかわからない装置産業ゆえのもろさがある。00年代初めには高速大容量通信の拡大をにらみ各社が光ファイバーを増産した。新興通信会社が続々と誕生し、投資マネーも流入したが、あっという間に供給過多に陥った。

 今の半導体業界は市況悪化を恐れる空気は薄い。米IT大手だけでないけん引役が次々に現れているからだ。中でも急成長する中国勢の存在は大きい。ネット通販のアリババ集団、交流サイトのテンセント、検索の百度。華城の工場に詣でる米3社のような企業群が中国で勃興している。「中国IT大手は米国大手の相似形。半導体需要は倍増する」。東海東京証券の石野雅彦シニアアナリスト(58)は言う。

 グーグルは昨年秋のサムスンとの交渉で「300ミリメートルシリコンウエハーで月間2万枚」とDRAMの供給を求めた。本来は個数で発注するはずなのに、製造側の単位であるウエハーベースで話が進む。専用ラインを設けるかのような安定供給の要請だった。

 サムスンはこれに応え、京畿道平沢で稼働したばかりの新工場でDRAMの増産を決めた。半導体部門を統括する社長の金奇南(キム・ギナム、59)はこのときの経営会議で「市況の変化に対応しよう」と拳を振った。中国の工場もメモリーの増産投資を重ねている。米中双方の巨大な需要をつかもうとする戦略が動き出した。(敬称略)

 半導体市場は需要が伸び続ける「スーパーサイクル」に入ったとの指摘もある。ただ、市況は乱高下を繰り返してきた。それでも強気の姿勢を崩さないプレーヤーたちの動きを追う。



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