迫真 安倍1強再び(1)不満のマグマ圧勝に死角 2017/11/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 安倍1強再び(1)不満のマグマ圧勝に死角」です。





 「これはちょっと言い過ぎだな」。衆院選で与党3分の2を得た首相、安倍晋三(63)は第4次内閣発足の1日の記者会見を前に頭を悩ましていた。

第4次安倍内閣が発足し、記者会見に臨む安倍首相(1日、首相官邸)

 事務方が用意した原稿は野党に大差をつけた圧勝を強調する内容だった。圧勝に言及して政権の推進力とするか、謙虚な姿勢を示すか――。安倍が選んだのは、会見の冒頭で「謙虚」「真摯」に触れつつ、「これまで3回の中で最も高い得票数によって自民党は信任された」と語る案だった。

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 自民党が先の衆院選で得た得票数は小選挙区2650万票、比例代表1855万票。事前の「議席減」の予想にかかわらず衆院解散に踏み切り2012年や14年の衆院選を共に上回る票を得たことは安倍の政権基盤強化を意味する。「人間、勝負しなくちゃいけないときはいちかばちかだ。勝負してよかった」。安倍は周囲に自負する。

 「この前の選挙はすごかったな。ちょっと心配したけど、全然大丈夫だった。本当にすごい」。5日午後の埼玉県の霞ケ関カンツリー倶楽部。米大統領のトランプ(71)からゴルフプレー中にほめられると「最近は私はついているんですよ」と応じた。

 政策決定は「安倍1強」が続く。「頑張っているところにはしっかり報いますから」。安倍は9日、旧知の日本医師会会長、横倉義武(73)を首相官邸に招き、診療報酬改定について伝えた。年末に予定する診療報酬改定は社会保障費の抑制策の柱だ。しかし安倍の横倉への配慮をくみ取ったのか、財務省には医師の人件費などにあてる「本体部分」に切り込もうとする動きは乏しい。

 安倍1強に死角はないか。安倍を見る自民党の視線には厳しさも漂う。

 「副総裁は議員でなくてもできるんですよね」。安倍は解散を表明した9月25日、衆院選の不出馬を決めた副総裁の高村正彦(75)に早々に続投を要請した。11月8日には郵政民営化で自民党を除名された元参院議員の荒井広幸(59)と先の衆院選で落選した元農相、西川公也(74)を内閣官房参与に起用。安倍に協力的な元議員が次々とポストを得ることに、党幹部の一人は「やり過ぎだ」と憤る。

 9日の二階派の派閥会合。元衆院議長の伊吹文明(79)が「安倍さんの『あらゆることに謙虚』という発言はよかった。でも、謙虚というのは体を表さないといけない」と話した。安倍が衆院選で打ち出した2兆円の政策パッケージは官邸主導で進んでおり「これでは結果的に安倍さんを傷つける。謙虚さが欠けていると言われかねない」と苦言を呈した。

 安倍への不満。それは国会議員が地元で感じ取った安倍への不信から生まれる。

 「あなたに1票を入れることは安倍さんの続投を支持することになる。それはどうも釈然としない」。当選11回のベテラン議員、逢沢一郎(63)は選挙戦で有権者からこうした声を投げかけられた。

 安倍への厳しい風当たりを感じた伊藤達也(56)は街頭演説で「加計学園や森友学園の問題はもっと説明しないといけない」と安倍に注文をつける発言を繰り返した。

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 衆院選の圧勝は野党の敵失にすぎない――。こんな党内の見方を敏感に感じ取った筆頭副幹事長の小泉進次郎(36)は11月2日、党本部で衆院選の「反省会」を開催。「今回の自民党の勝利は、理屈ではないところでもたらされた産物だ」と総括してみせた。

 安倍が宿願の憲法改正に突き進めば、さらに党内の風当たりは強くなりかねない。政権内で有力視される憲法改正のシナリオは、19年夏の参院選を控えた同年1月召集の通常国会で発議する案だ。

 元幹事長の石破茂(60)は「持論を引っ込めるつもりは毛頭ない」と漏らす。安倍が提案した9条に「自衛隊」を明記する案への異論だ。石破派は20人規模にとどまるが、党内の不満の受け皿となれれば、安倍を脅かす可能性も否定できない。

 「9条以外の多くの党が賛成する所からお試しで改憲する形ならよかったが、9条を外すと安倍の支持母体が黙ってないはずだ。安倍はむしろ追い込まれた」。元自民副総裁の山崎拓(80)はこう指摘する。

 堅く見える政権基盤の底には不満のマグマも流れる。安倍1強には強さと弱さが交差する。

(敬称略)

 衆院選で自民党が圧勝し「安倍1強」の構図が続く。与野党への波紋を追う。



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