迫真 波立つ海の攻防(4)旗印は「法の支配」 2016/07/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「迫真 波立つ海の攻防(4)旗印は「法の支配」」です。





 「ルールに基づく国際秩序への挑戦がある今、法の支配を重視し力による一方的な現状変更を認めない原則を貫くべきだ」

安倍首相は中国の李克強首相と握手したが、ASEM会合では火花を散らした(16日、ウランバートル)=共同

 15日、首相の安倍晋三(61)はモンゴルで開いたアジア欧州会議(ASEM)首脳会合の初日、発言要領に沿ったスピーチをする中、予定外のくだりを加えた。「アジアでは南シナ海情勢の平和的解決が必要だ」。続く中国首相の李克強(61)はすかさず「中国は平和と安定の海に貢献している」と反論した。

 安倍は当初、ASEMの初日は南シナ海に直接触れず、2日目の協議で、中国の南シナ海での主権を否定した仲裁裁判所の判決受け入れを迫る予定だった。しかし初日から問題意識を明確にして、発言要領にない「南シナ海」の文言まで加えた。

 安倍の脳裏をよぎったのは2013年10月、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日米中韓など18カ国の首脳が集ったブルネイでの東アジア首脳会議。安倍が南シナ海問題で「関係国が国際法を順守すべきだ」と訴えると7カ国が賛同した。

 中国に配慮し南シナ海への言及に消極的な国も、横並びだと発言しやすい。ASEMでも2日目に、南シナ海を念頭に国際法の順守や紛争の平和的解決に触れる国が相次いだ。中国の挑発を抑えようと「法の支配」を旗印に対中包囲網を築く。

 「できるだけ早く出した方がいい」。外相の岸田文雄(58)は仲裁判決の直前、判決後に談話を発表する時機を探った。「世界で一番早い発表となりそうですが大丈夫ですか」。日本の対応が突出しても問題ないか確認する事務方の背中を押した。

 迷いを見せれば足元を見られる。談話は海での法の支配と紛争の平和的解決を訴え「当事国は仲裁判断に従う必要がある」とするA4判1枚の簡素な内容。日本時間の12日午後6時に判決が出た後、30分で発表した。

 しかし日本が南シナ海問題で厳しい態度を取れば、中国はさらに挑発しかねない。18日には中国国家海洋局の巡視船3隻が尖閣周辺の領海に入った。中国海軍も「東シナ海での活動を日本周辺近くまで広げた可能性がある」(海上自衛隊OB)。統合幕僚長の河野克俊(61)は仲裁判決後、「中国の動きがエスカレートしている。万全の警戒監視をしていく」と漏らす。東シナ海の緊張は一段と高まりつつある。

(敬称略)

 吉田渉、川合智之、永井央紀、佐竹実、地曳航也が担当しました。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です