迫真 漁業資源ウォーズ4 食守る完全養殖の夢 2017/9/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 漁業資源ウォーズ4 食守る完全養殖の夢」です。





 8月中旬の早朝。奄美大島南部の沖合で、体長2メートルほどのクロマグロが次々と船上へ釣り上げられた。バタバタと激しく動くクロマグロを数人がかりで押さえつけ、保存のための血抜きを施す。まるで天然モノのような生きの良さを見せるクロマグロは人工授精させた卵から育てた成魚の卵をふ化し、育て上げた「完全養殖」。事業化は不可能に近いとされてきたが、マルハニチログループは約30年かけて2015年の初出荷にこぎつけた。

食を自衛する上で養殖技術の発展は欠かせない(鹿児島県瀬戸内町)

 マルハニチロが1年間に出荷する完全養殖クロマグロは約300トンと、国内消費量の1%にも満たない。それでも責任者の小野寺純(48)は「自社で出荷するクロマグロすべてを完全養殖にしたい」。夢物語のように聞こえる目標だが、世界的に水産資源の不足が懸念される中「完全養殖が必要になる」からだ。広さ約3200平方メートルのいけすの中を泳ぐクロマグロの体調管理のため、担当者たちは海面からいっときも目を離さない。

 一般的な養殖は天然の稚魚を使う必要があった。稚魚の確保も難しくなっており、完全養殖が活発になっている。

 日本水産の子会社、黒瀬水産が手掛ける養殖ブリ150万尾の半数を完全養殖が占める。宮崎県串間市の沖合では台風などの被害を避けるため、広さ約100平方メートルの浮沈式のいけすを使って完全養殖に取り組む。

 ブリの旬は秋冬だが、完全養殖で春夏の端境期でも出荷できる。卵を産む親魚の産卵期を調節することで、機動的に出荷時期を設定。天然稚魚の不漁がささやかれた今年は、天然の旬である秋冬に照準を合わせた。「天然モノが不漁になっても日本中の食卓に養殖ブリを届けられる」。黒瀬水産社長の山瀬茂継(55)は自信を見せる。

 日本水産は完全養殖の魚類を増やす。大分県佐伯市にある日本水産の研究センターで4月、完全養殖のマダコのふ化に成功した。マダコの完全養殖はこれまで例がない。ほんのわずかな刺激でも稚魚が死ぬため、外部から遮断した環境で稚魚の生育に取り組む。

 世界的な水産資源の争奪戦に翻弄されるだけでは、日本の食は守れない。天然モノを補完する役割だった養殖が主役に躍り出ようとしている。(敬称略)

 佐々木たくみ、原島大介、中戸川誠、湯前宗太郎が担当しました。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です