迫真 狙われる金塊(2)運び役は主婦 2017/9/28 本日の 日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 狙われる金塊(2)運び役は主婦」です。





 報酬は1人あたりわずか20万円ほどだった。「アルバイト感覚だった」。今年6月、愛知県警に関税法違反(無許可輸入)などの容疑で逮捕された女(66)は動機をこう打ち明けた。

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空港税関では金の密輸の取り締まりを強める(中部国際空港)

 昨年12月、中部国際空港の入国検査で摘発された5人は40~70代の主婦やパート。下着のポケットなどに隠し持っていた金の延べ板は計30キロ(約1億3千万円)。消費税分だけで約1千万円に上った。

 金の密輸では犯罪とは縁がなかった主婦や若者らが運び役を担うケースが多い。「報酬は1キロあたり2万円程度。安易に請け負う人間が多すぎる」。税関関係者はあきれた表情だ。

 「年齢、性別不問。韓国旅行に行きませんか」「簡単な運搬バイトです」。インターネットの掲示板に誘い文句が躍る。飛びついた主婦らを言葉巧みに運び屋に仕立て、少量ずつ分散して空港の検査をくぐり抜ける。「ショットガン方式」と呼ばれる方法は覚醒剤密輸などで使われる常とう手段だ。

 大胆な手口も目立つ。今年7月、台湾から関西国際空港に向かっていた格安航空会社(LCC)バニラ・エア便。乗務員が機内のトイレの壁がずれているのに気づいた。着陸後、巧妙に隠された6つの袋から数十キロの金塊が出てきた。プライベートジェットによる空輸や小型船による洋上取引もある。

 背後には巨額な資金力を持つ密輸組織がちらつく。「売人を確保する必要がある薬物と違い、国内に持ち込めば簡単に売却できる。日本の暴力団や香港、韓国の組織が日本を狙っている」と東京税関調査部次長の後藤政秋(58)。警察幹部も「暴力団が新たな資金源としている」とみる。

 水際対策には限界がある。「とても処理しきれない」。税関関係者が悲鳴をあげる。成田国際空港に降り立つ飛行機は多い日で230便に上り、4万人が入国検査場を通過する。すべてチェックするのは不可能だ。「優先順位が高いのは生命に危害が及ぶ銃器や麻薬」。監視の目は金の密輸が多い韓国などより、アフリカや欧州の便に向く。

 6月の衆院内閣委員会。「税関の体制が弱いのではないか。罰則が軽いのではないか」と詰め寄る民進党の緒方林太郎(44)に当時の財務政務官、三木亨(50)は「取り締まりを強化し、厳罰化を含め、有効な対応策の検討を行っている」と切り返した。“黄金の国”を目指し送り込まれる運び屋対策に、一刻の猶予も許されない。

(敬称略)



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