迫真 狙われる金塊(3)「日本は高く売れる」 2017/9/29 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「迫真 狙われる金塊(3)「日本は高く売れる」」です。





 「外国人でも買い取ってくれますか」。9月上旬、大手貴金属商の徳力本店にメールが届いた。送り主は台湾人。1キログラムの地金を換金したいという。「もちろん。ただし納税証明書が必要です」。返事はなかった。

国の説明会では買い取り額への消費税分上乗せに異論も

 同じような問い合わせは今年に入って3件目だ。取締役の新井昌広(54)は「日本は税をつけて高く買い取ってくれる、という変なイメージが先行している」と戸惑う。

 国外から持ち込む金には消費税がかかる。だが買い取り時に納税証明書の提出を求めるかは業者の判断だ。外国人もパスポートを示せば販売できる。宝飾リサイクル大手、ネットジャパン(東京・台東)会長の吉沢敏行は「金が本物で身元が確認できれば買う。どこから持ってきたとまでは聞けない」と話す。

 密輸された金は法人や個人の手を介し、巧妙に法の網をくぐる。大手の地金商は納税証明書の提示まで求めるが、甘くなりやすい中小の業者は密輸業者には抜け穴に映る。金取引を監督する経済産業省でさえ「正直言って何社あるのか実態がつかめない」とあきらめ顔だ。

 「買い取りは減少傾向。突出して額が多い業者は怪しい」。買い取りサイト「リファウンデーション」運営会社社長の杉兼太朗(39)は言い切る。国は2012年、200万円を超える買い取りは売り主を記した「支払調書」を税務署に出すよう貴金属店に義務づけた。客は高額な売却を避けるようになり、同社の16年の月間買い取り額は11年の5分の1に減った。

 個別に買い取り額を調べれば怪しい業者は分かる。だがそこまでは「緻密にチェックできない」(経産省)。届かぬ監視をあざ笑うように、一部の業者を通じた密輸は止まらない。

 金取引の慣行である現金取引は、密輸業者には足がつきにくい「うまみ」となる。売却益が50万円を超えると確定申告が要るが、大手貴金属商の幹部は「少額でも銀行口座に入金履歴を残したくないと、振り込みを嫌がる人は多い」と明かす。

 9月20日、経産省の講堂に警察庁、財務省、経産省の担当者と約60人の貴金属業者が集まった。密輸摘発への協力を呼びかける会合で、会場の業者が「税金が付加されるシステムが問題では」と、買い取り額に消費税分を上乗せする仕組みに疑問を投げた。財務省関税局の職員は「うちの管轄ではない。我々は水際で(密輸を)止める」とだけ応じた。「踏み込んだ話はゼロ」。業界関係者は言い捨てて会場を後にした。

(敬称略)



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